恋愛小説【俺様のナツ!!】29 | 相武万太郎オフィシャルブログ「六転び七転び八転びROCK。」(音楽、小説、酒)

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ベッキーがテレビに出てるとチャンネルを変えてしまう男が、好きな音楽や小説を語ったり書いたりらじばんだりしています。音楽は洋楽ロックメインだったが最近はハロプロ大好きです。特にANGERME。

8.秀明




今日も何事もなく、1日が終わろうとしている。しばらくは里佳子さんが忙しくて会えない。



寂しいが、それは仕方ないことだし、僕だって暇じゃない。朝令暮改が当たり前となっている中国法の体系化作業、あれだって滞ったままだ。それに、欧州のTOB事例研究もそろそろ取りかからないとゼミでの発表に間に合わない。



勉強なら、やるべきことは山ほどあるのだ。だから、普通の日は歓迎すべきはずだった。



でも、最近の僕は完全に里佳子さんに骨抜きにされていて、勉強が手につかない。里佳子さんに会いたい。声を聞きたい。僕を見つめてほしい。そんなことを考えているだけで、あっという間に時間が過ぎてゆく。



彼女は、他の女とまったく異なる、美と知性を兼ね備えた女性だった。日本中のエリートが集まっている同級生のなかで、僕が尊敬するのは里佳子さんだけだった。



首席卒業の花道を僕に譲ってくれたことも知っている。そのために必死に勉強し、二回生のときに司法試験に合格。生半可な気持ちであのスミス・エマーソン ローファームになど受からない。早晩、ニューヨーク事務所への栄転だって夢じゃない。ニューヨーク州弁護士の箔をつけ、世界を股にかけるキャリアウーマンになれるはずだ。



だから、僕と結婚したいなんて言うのが信じられなかった。ああ、里佳子さんは不眠不休なのではないだろうか?だから、そんな世迷い言を言い出したのだろう。それほど、僕のような人間を好いてくれているなんて理解の範疇外だったのだ。



恋の六法全書など存在しない。僕は解答のない問題を解くのが嫌いだから、数学は嫌いだった。でも、里佳子さんとの恋は、毎日が楽しくて仕方なかった。



里佳子さんは、決して僕を裏切らない。友人も少ない分、僕は人を見る目はあるつもりだった。


恋は盲目、あばたもエクボと言われるが、僕は至って冷静に観察し続けた。彼女は僕に首ったけだったし、だから僕は夢中になった。





好かれることの快感――。




勉強以外に快感を感じることのできなかった不感症の僕が、里佳子さんの愛によって生まれ変わることができたのだ。




僕ほどの幸せ者はそういまい。そう信じられた日々だった。