とはいえ、とてもじゃないが上京先の電話番号を聞く気にはなれなかった。俺のキャラじゃないし、何か気になることでもあれば向こうからかけてくるだろうと思っていた。
いや、正直に言おう。怖かったんだ。自分のミスを正すことに。ミスの結果を知ることに。薫を失うことが。
俺は、自分の努力で手に入れたものには自信をもっていた。水泳にしろ、勉強にしろ、すべて血のにじむような青春期を代償にして得たものだ。今や俺は羽をもがれた鳥に過ぎない。こんな俺に何の魅力があるのか!?
確かに俺はこれまでの人生、ずっともてていた。それは俺が町の期待を背負ったスーパーマンだったからだ。薫は違うと思っていたけどそれは買いかぶりだった。それでも俺は、
薫が大好きだった。
薫は見ていて飽きがこない。くるくるとかわる表情と、俺と対照的な色白さとぱっちりした目を見つめていると吸い込まれそうになる。少年とオンナが入り交じった薫にいつの間にかとりつかれていたことに、今更ながら気づいた。それは重症だ。
だが武器をもたずに立ち向かう勇気はなかった。努力でカバーできないくせに、プライドだけはそのまま残したやっかい者。それが俺だった。
ぎらついた太陽が照らし続けるアスファルトに突っ立っている公衆電話を、暗膽(あんたん)とした気分でにらみ続けた。もちろん、薫から電話があるはずもなく、蝉の空しい叫び声が脳に響くだけだった。
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