RUIは飽きることなく、桜色した風変わりなベルを眺めていた。
「幸運のベル」
RUIは悲しいことがあると当て所なく市内をふらつく。昨夜、偶然通りかかった露天商で、このベルを買い求めたのだった。
キツネ目の浅黒い初老の男が後生大事そうにベルを抱え込んでいるのが目に留まった。
「オジサン、それは売り物?」
「プレゼントしようという気持ちをもつ人だけにお譲りするんじゃ」
「あたしね、大切な人に元気になってもらいたいの。売ってくれない?」
RUIは、老人に粘り強く交渉し、ようやく手に入れたのだ。彼曰わく「大切な人が、願いをこめてベルを鳴らす」と願いが叶うらしい。真偽のほどは定かでなかったが、都市伝説めいた話を好む恋人、万太郎にぴったりの贈り物だと思っていた。
どんな音が鳴るのか気になってたまらなくなり、RUIはラッピングする前に鳴らすかどうかを思い悩みながら、じっと見つめていた。
別に願い事をするわけではない。敢えていうなら彼の幸せを願っているだけなのだから、一度鳴らしてみても構わないではないか。
RUIはそう結論づけるとベルを手にとって、ちりん、
と鳴らした。
それはどうということのない金属音だった。彼女の「音を聴きたい」という願いに反応し、部屋の外から魑魅魍魎が侵入する足音をかき消してしまったこと以外は――。
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