【ガチパンダ!―外伝―】 | 相武万太郎オフィシャルブログ「六転び七転び八転びROCK。」(音楽、小説、酒)

相武万太郎オフィシャルブログ「六転び七転び八転びROCK。」(音楽、小説、酒)

ベッキーがテレビに出てるとチャンネルを変えてしまう男が、好きな音楽や小説を語ったり書いたりらじばんだりしています。音楽は洋楽ロックメインだったが最近はハロプロ大好きです。特にANGERME。

謝らなくちゃ!そう思ったら目の前のサンドイッチは瞬く間に消えてゆく。


「おやおや、切り替えの早い坊ちゃまだこと」


「僕、行ってくる!」



いいながら玄関に駆け出すや否や、いきなり何かに衝突した。たたらを踏みつつも何とかとどまった弟は、目の前にあった壁をみあげた。





「兄ちゃん――」





見間違えようもない、我が兄。自分がこれから向かうべき相手だったのに、突然の出会い頭に弟は言葉を失う。



「兄ちゃん、僕、僕――」



見上げた瞬間、はっと気づいた。兄に口五月蝿く躾られたこと、「兄ちゃん、おはようございます!」



それは挨拶だ。



「おはよう」



兄の声は、太く凜としていて、柔らかな青空によく似合っていた。


兄に見つめられるとすべて見透かされているようでむず痒い。だけど、久し振りのこの痒さは、悪くなかった。



息を吸って吐き出すと、自然と己の過ちを話すことができた。兄は、じっと弟の瞳を見つめ、聞き終えると弟の頭をくしゃくしゃと撫でた。嬉しそうに目線の高さを合わせると、一通の封筒を差し出した。








「おめでとう」



弟は訳が分からない。なぜなら誕生日は半年も先だからだ。兄は弟が目が点になっているのを面白がっていたが、ひとしきり笑ったあと、真顔になった。


「これはな、じいちゃんと俺からの証だ」



「??何のあかし?」



兄は、すっと立ち上がった。


「元気だった時からのじいちゃんの遺言だったんだ。何かあったら、お前が渡せってな。お前が、一人前の男になったら、誕生日記念にパスポートをあげろってな」



「これが、パスポート?」



「覚えてないか?昔のお前がじいちゃんの誕生日にそれをパスポートだってプレゼントしたんだ」


僅かに弟の疑問が氷解した。だが、なんでパスポート?


「『パスポート』って言葉がマセガキだと思ったらしい。いつか相応しい男になったら、渡したかったんだと。本当は、直接にな……」


賢明にも、互いの無念の表情を見ようとはしなかった。涙を見せたくなかったのだ。






《カテゴリー:涙ホロリ小説》