不思議な魅力をもった女性だった。
名前を凜、とだけ名乗った。大人の色香を漂わせる黒を基調にしたコートのインナーには、紫を差し色にしたコーディネート。なのに大切そうに抱えているクマのぬいぐるみが目をひいた。
「鳥居みゆきのファンなのかい」
この女を落としたい。そんな焦りからか、馬鹿げた台詞しか思いつかなかった。だが凜はころころと笑ってくれた。もてない訳はないだろうが、ステディがいないようにみえる彼女に、俺は一目惚れしていたのだ。
直球勝負しかできない俺だが、こんな日に限ってしどろもどろ。まったく、立川のジゴロと呼ばれた俺も腑抜けになってしまったのだから、相当なものだ。
君がほしい。震えるように気持ちを伝えると、凜は何も言わすについてきた。クリスマス万歳。俺はサンタにキスをした。
それからの記憶がぷつりと途絶えた。気がつけば朝だったのだ。
ベッドの脇には凜の持っていたあのぬいぐるみが置いてあった。彼の耳に挟まれていたメッセージを読んで判然としなかったが、ぬいぐるみを持った瞬間、愕然とした。
―犯罪者の世界へようこそ――
ぬいぐるみには、頭蓋骨が埋められていたのだ。とんでもないジョーカーを掴まされちまった。
以来俺は、毎夜ぬいぐるみを抱え込んだまま、ナンパに励んでいる。
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