「わぁ…会場に華が咲いたみたい。凜さん、素敵なレオタードを作って下さってありがとう!」
目の前にいる選手たちは早速練習着の上から私の作ったレオタードをあてがって、嬌声をあげている。
彼女たちの笑顔をみると、締め切りに追われ参っていた心身の疲れも吹き飛ぶというものだ。
私には夢がある。それは、自分のひいきにしてきたチームがいつか学生チャンピオンになり、私の大切な芸術品を世に羽ばたかせたいという願いだった。
それぞれの大学にそれぞれの仕立て屋がいる。私は、レオタードに愛と願いをこめて作りつづけてきたのだった。
そして、その願いが叶うときがいよいよやってきた。寒風吹きすさぶ冬空のなか、私は試合会場に足を運んだ。
出だしはいい。一人の小さなミスも許されない会場の雰囲気に包まれるなか、彼女たちは必死の演技に没頭していった。私もいつしか一員となり、ぎゅっと両手を目の前に組み、祈っていた。
あっ、センターのあの子がケアレスミス。だがすかさず隣りのキャプテンがフォロー、大事には至らない。抜群のチームワークに驚嘆した。そして、彼女たちはついに最高の栄冠を手中に収めたのだった。
歓喜にうち震え、抱き合う選手たち。あちこちでフラッシュライトがたかれた。
今だ
私の夢、叶え――。
手元のスイッチを押した瞬間、鮮やかに彩られたレオタードが銀色に変化する。スピーカーからは、惚れ惚れするあの音楽が鳴り響く。
「この音楽は――?、駄目っ、体が勝手に反応しちゃうっ」
パペットたちの意志とは無関係に踊り狂わせるあの音楽。私は、最高の心技体をもった演者による、最高の舞台で、あのダンスをみたかったのだ!
今は決して観ることのできない、あの武富士のダンスを――。
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