【花の遺言】 | 相武万太郎オフィシャルブログ「六転び七転び八転びROCK。」(音楽、小説、酒)

相武万太郎オフィシャルブログ「六転び七転び八転びROCK。」(音楽、小説、酒)

ベッキーがテレビに出てるとチャンネルを変えてしまう男が、好きな音楽や小説を語ったり書いたりらじばんだりしています。音楽は洋楽ロックメインだったが最近はハロプロ大好きです。特にANGERME。

儂(わし)か?生きておればゆうに齢(よわい)400年を数えることができよう。儂からすれば、現代で名を轟かせておるらしい輩どもなどひょっこに過ぎん。何せ、儂はあの太閤殿と刃を交えたことのある者ぞ。




儂は戦に命を懸けておった。戦場で死ぬなら本望だったのだ。だが儂は強すぎた。傾く(かぶく)相手も敵もおらぬようになり、日々を徒らに(いたずらに)過ごすばかりだったのだ。



そんなとき再び儂の心に焔(ほのお)を灯したのがお市(おいち)だった。儂は静かだが猛々しさをももつあの牝であれば、傾奇者(かぶきもの)としての儂の全てを理解してくれると感じた。



だから、全てを委ねることにしたのだ。







言葉など要らぬ。鋭利な唇を貪るとお市の背中が悦びにうち震えるのを、両手に感じることができた。興奮は始めから最高潮に達し、愛撫を忘れることにした。背中にまわり唐突にお市を貫くとただ一点に稲妻が、激しい快感が、脳天に突き抜け溶けていった。



そして漸く互いに掌を重ね合わせた。ぎりぎりと指が軋む。か細い体躯からは信じられないほどの力が加わり、儂の両手は悲鳴をあげる間もなく砕け散った。お市は己に鮮血が弾け飛ぶのをむしろ喜々として啜っていたが、やがておもむろに儂の首を手刀で跳ねた。




上半身と離れたのを感じる間もなく儂の頭は床にごろりと落ちた。首を傾げるように転がった目の前には床の間が垂直に見えている。我ながら、天晴れな傾きだと思った。



これでよい。儂は生きてきて初めて、死ぬほど気持ちよい快感に酔いしれた。儂の種はお市に埋めた。儂の体はお市の血肉となろう。そしてお市の力。この三位一体こそが儂の傾きであり、お市のなかから最強の儂が生誕することになる。儂は今より強くなり、再び傾かんことを。そのときまでお市よ、強く生きよ――。






《或る蟷螂(かまきり)の言霊を紡いだ物語》














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