◆第1章◆
東京の、通勤の核をなす山手線では毎朝殺人未遂が起きている。とくに僕のような体型の人間には、朝が最も憂うつな時間だった。ただ電車に乗っているだけなのだがあからさまな視線に焼き殺され、真冬なのに蒸し暑い車内を殺気立たせるのに一役買っていた。
ふらふらしながら会社に向かう毎日。僕は耐えられず、たった半年でサラリーマンをやめてしまった。
しばらくはプータローとして日がな暮らしていたが、裕福な家庭ではない。実家で暮らすなら家業を継げと迫られ、腹を括った。親父のなくなった今では貴重な収入源となっている。
僕の職業は、シェフ。シェフと言えば大層聞こえがよろしいが、要はさびれたカレー屋の店主である。
元来、食べることの好きな僕はこの仕事に向いていない。仕込んだカレーを自分で食べてしまい、客に出す分量が限られるのだ。
3食分を差し引き1日15食限定。
それがプレミアム感を出したのか、毎日完売する。だが、さほど儲からない。
そこで副業に始めたのが探偵業だった。僕は思い立つとすぐに、店舗の入り口に貼り紙を出してみることにした。
「探偵、始めました」
(つづく)
この小説はフィクションであり、作品に登場する団体や個人は実在しません。《カテゴリー:ホラー小説、恐怖小説、怖い話、恐い話》
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