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そうして私は[ステルス]の開発に手を染めることになったのでした。
とはいえ、ほとんどはあなたが開発したといっても過言ではない、私は確実性を高める実験と解毒剤を開発することでした。
あなたの才能に嫉妬した私は、あろうことか夫が追放するように仕向け、さらにあなたの作品を盗んだ、本当に最低な女です。
あなたが密かに[ステルス]開発に勤しんでいたのを知っていたから――、
いえ、あなたは私に知らせたのだと、今は思っています。私の愛を確かめようとしたのだと。
私は裏切ってしまった。なのにあなたは再び連絡してくれた。あなた1人で解決できた筈のこの問題を確かめようとしてなのか、分からなかった。
ただ、唯一確信できたのは、私は今でもあなたを愛していて、敢えて死を選ぼうとするあなたを死なせたくなかったということでした。
だから、今、まさに死の直前にいるあなたを私は助けるのです。
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日記はここで途切れていた。だが関係者の調査により、次の事実が明らかになっている。
[ステルス]の解毒剤は感染者の血液が元となっている。被感染者自身の血液によって被感染者に効く解毒剤を製造することは出来ないため、佐知子は、奥村を感染から救うために、まずは奥村の血液から自らを感染させ、さらに自分の血液から奥村に効く解毒剤を製造し、彼に注入したのである。
佐知子は奥村以外の血液から製造した解毒剤を注入しない限り、助かる見込みはなかった。つまり大二郎の凶弾に倒れずとも、[ステルス]に冒され死亡する運命だったのだ。奥村がもしそれを知っていれば、世界は変わっていたかもしれない――。
だが莫大な金が必要な核と対照的に、化学兵器は別名[貧者の核]とも言われ、智力さえあれば容易く製造が可能なのだ。奥村が作らずとも他の誰かが日々進化する兵器を生み出し、世にばらまこうとするだろう。つまり、パンデミックは近い将来あなたの身に再び起こりうる事象なのだ。
(次回、あとがき)
この小説はフィクションであり、作品に登場する団体や個人は実在しません。