その天使はまだ若く、情熱に溢れていた。
しかしある日、悪魔の所業により、羽をもがれてしまった。それ以来、彼は飛ぶことが出来なくなった。
仕事も思うようにできず、やがて荒れるようになった。酒に逃げた。忠告する友人も失った。順風満帆だった彼の人生は、歩みを止めたままだった。かつての同僚は、そんな彼を[堕天使]と揶揄した。
彼を哀れに思った神は、彼と面談しようと呼び出すことにした。天使は、天国への階段を上って、神の下へ向かった。以前の彼なら羽を使ってひとっ飛びだったのだが、今はそれができない。小さな体でふうふう言いながら一段一段を上る。暴飲暴食で痛めつけた体が軋んだが、それすら自虐的になっていた。
人間界で数えて一年、ようやく天使は神の下にたどり着くことができた。振り返ると、ガラスのように透き通った階段が下へ下へとのびているのがみえた。思わず、ため息をついた。
すると神が現れ、いった。「どうだ。長い道のりを歩いた感想は」
「羽をもがれた天使ほど醜いものはないと、つらい気持ちを噛みしめながら上ってまいりました。神様、私はもう飛べないままなのでしたら、どうか殺してください」
「羽をもがれたのはお前の怠慢ゆえ。だから再生させることはできない。だが、お前はここまで羽を使わずにやってきた。充分に罪を償った。望みを叶えてやろう」
「一つ、お願いがございます。生まれ変わっても、人間の役に立ちたいのです」
「良かろう。しかし道のりは険しいぞ」
神の慈愛に天使は涙を流した。覚悟を決め、ぎゅっと目を閉じた次の瞬間、意識は消えた。神の前から肉体も消え去った。
それから一年後、彼は新たに人間に役立つための存在としてこの世に生を受けた。だがこの世でも、彼はうっかり昼寝をしていたところ、悪魔に耳をかじられてしまった。神様は怒り、彼をどうしようもない人間のもとへ送りつけてしまったのである。
これが[ドラえもん]の物語のはじまりだというのが、天使たちの間で今も語り継がれている都市伝説である。
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