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奥村は、空を眺めていた。
白と青のコントラストを目でなぞりながらも、自らがじっくりとあたためていた仕掛けにパズルの断片が嵌ったかどうかを考えていた。
革命家「蒋永春」として活動を始めた当初、奥村はコネクションとスポンサーがないことに悩んでいた。「蒋介石」の血統は台湾という場所でこそ最大限に発揮されるものであり、日本で生きてきた自分に対する賛同者を集めるには、ひとつしか方法はなかった。それがインターネットの活用である。
国立感染症研究所のエースだった三崎佐知子が奥村を「天才」と評したのは、研究者としての知識や、ずば抜けた発想力だけを指しているのではない。圧倒的な吸収力と応用力、さらに幅広い知識に基づいた展開力だった。
研究者として革命家として[Megadeath]の開発に心血を注ぐ一方で、片手間でWebおよびシステム構築に関する知識習得にも時間を割いた。その結果、彼が指導者として設立した政治団体「台湾革命倶楽部」は急成長し、活動地盤を築いていった。
蒋永春は、Webの世界では最も神に近い存在として崇められるようになった。何しろ、様々な世界における第一人者が、彼の深い見識と圧倒的な吸収力を目の当たりにさせられたのだ。いつしか蒋永春は革命家とは別の流れから神格化されてゆく。その流れで知り合ったのが防衛省長官の息子である永沢英寿だ。
英寿は「神」に圧倒され、いつか「神」に奉仕できる日がくることをずっと願っていた。
実のところ、英寿のハッキング技術は「神」を遥かに凌ぐのだが、「神」蒋永春は全能だった。マッシュアップによって英寿を凌駕し、英寿をねじ伏せたのだった。
ただひとつ、神は重大な一点を見逃してしまったことから、今回の細菌兵器戦争は始まったのだ。
英寿は、純粋に神と勝負したくなったのだ。
神をハッキングする
この神を冒涜する行動が、「ステルス」の誕生に深く関わることになるのだった。
(つづく)
この小説はフィクションであり、作品に登場する団体や個人は実在しません。《カテゴリー:サスペンス小説、恐怖小説、怖い話、恐い話》