【ビデオ】通常バージョン | 相武万太郎オフィシャルブログ「六転び七転び八転びROCK。」(音楽、小説、酒)

相武万太郎オフィシャルブログ「六転び七転び八転びROCK。」(音楽、小説、酒)

ベッキーがテレビに出てるとチャンネルを変えてしまう男が、好きな音楽や小説を語ったり書いたりらじばんだりしています。音楽は洋楽ロックメインだったが最近はハロプロ大好きです。特にANGERME。

「…ね、マジにみるの」



私はさっきまでのはしゃいだ態度を潜め、Aにきいた。Aは私たちの先輩Gさんから持ち込まれた当初からのテンションを保っているようで、軽い返事で私をいなし失望させる。


「何だよ~空気読めよ!死ぬわけでもねーんだし」


Gさんが口を挟む。「…いやわかんねーよ。これ、取り扱いに気をつけねーとマジ殺されるって」


さすがにAは少しのけぞったが、それでも好奇心には勝てなかったようだ。「俺は見るぜ。お前、抜けてもいいけど、このビデオの話は漏らすんじゃねーぞ」



私は観念し、部室のカーテンを引いた。「見るわ」私もジャーナリスト研究会のサークルの長、好奇心の塊なのだった。それに、女だからと陰口を叩かれることも許せなかった。


Gさんが持ち込んできたビデオとは、W大サークルの、無人島での合宿の様子を撮影したホームビデオだった。


ビデオを回すと、私たちと同じ年代の男女10人ほどが浜辺でのランニングや筋肉トレーニングをしている様子が映し出された。


やがて突然場面が切り替わると、夜の宴会風景になった。闇に隠れたテントの梁の一部が、焚き火によってあらわとなっていた。昼間の明るい声は、完全に消え去っていた。


(まさか本当に殺されてたなんて…)

(一体誰が)

その後またも場面が切り替わり、さっき震えていた女性たちの惨殺死体が映されていた。



そこでビデオは終わった。あまりにも衝撃的な映像だったため、暫く声を出すことすら出来ないでいた。するとAがGさんに質問した。「これ、途中あちこちぶつ切りされてますね。何すかね」

「殺人の様子が映された場面だけがカットされてる。別バージョンがあるって話だ」

ぞっとした。誰が、どんな目的でこのビデオを回していたのか。


さらにおぞましいのは、なぜ殺人の様子のみ集めたバージョンがあるのかということだ。


そもそも、このビデオに映っていたメンバーは全員刺し殺されていた。


【全員】だ。


撮影者が全員を殺したか、殺人鬼の行いを撮影する者として「契約」したか、いずれかだろう。



それにしても、Gさんはビデオをどうやって手に入れたのだろう。考えるにつれ、私は震えをとめるのに必死にならざるを得なかった。もしも、AとGさんが殺人鬼と撮影者だったら――。


そうでなければ、ビデオを見せるわけがなかった。

次の瞬間、私の肩に2人の手が置かれた。