「…ね、マジにみるの」
私はさっきまでのはしゃいだ態度を潜め、Aにきいた。Aは私たちの先輩Gさんから持ち込まれた当初からのテンションを保っているようで、軽い返事で私をいなし失望させる。
「何だよ~空気読めよ!死ぬわけでもねーんだし」
Gさんが口を挟む。「…いやわかんねーよ。これ、取り扱いに気をつけねーとマジ殺されるって」
さすがにAは少しのけぞったが、それでも好奇心には勝てなかったようだ。「俺は見るぜ。お前、抜けてもいいけど、このビデオの話は漏らすんじゃねーぞ」
私は観念し、部室のカーテンを引いた。「見るわ」私もジャーナリスト研究会のサークルの長、好奇心の塊なのだった。それに、女だからと陰口を叩かれることも許せなかった。
Gさんが持ち込んできたビデオとは、W大サークルの、無人島での合宿の様子を撮影したホームビデオだった。
ビデオを回すと、私たちと同じ年代の男女10人ほどが浜辺でのランニングや筋肉トレーニングをしている様子が映し出された。
やがて突然場面が切り替わると、夜の宴会風景になった。闇に隠れたテントの梁の一部が、焚き火によってあらわとなっていた。昼間の明るい声は、完全に消え去っていた。
(まさか本当に殺されてたなんて…)
(一体誰が)
その後またも場面が切り替わり、さっき震えていた女性たちの惨殺死体が映されていた。
そこでビデオは終わった。あまりにも衝撃的な映像だったため、暫く声を出すことすら出来ないでいた。するとAがGさんに質問した。「これ、途中あちこちぶつ切りされてますね。何すかね」
「殺人の様子が映された場面だけがカットされてる。別バージョンがあるって話だ」
ぞっとした。誰が、どんな目的でこのビデオを回していたのか。
さらにおぞましいのは、なぜ殺人の様子のみ集めたバージョンがあるのかということだ。
そもそも、このビデオに映っていたメンバーは全員刺し殺されていた。
【全員】だ。
撮影者が全員を殺したか、殺人鬼の行いを撮影する者として「契約」したか、いずれかだろう。
それにしても、Gさんはビデオをどうやって手に入れたのだろう。考えるにつれ、私は震えをとめるのに必死にならざるを得なかった。もしも、AとGさんが殺人鬼と撮影者だったら――。
そうでなければ、ビデオを見せるわけがなかった。
次の瞬間、私の肩に2人の手が置かれた。