高校生になって電車通学になった。ある日を境に、二度寝しなくなった。理由は「彼」の存在だ。
彼は「サトシ」という名前で、私の近くにある男子校に通っている。出会ってから半年、彼についての情報はこれくらいだ。彼の友だちが、もっと積極的にインタビューしてくれたらいいのだけれど。
あっ、もうひとつ。くしゃっとなる笑顔が何ともいえない。イケメンって訳じゃないの。だからアスカとかに話してもきっと理解されないかもしれない。
でも、私だけが彼の魅力に気づいてるのかもと思うと、ちょっと嬉しい。
身長は多分――。私と15センチくらいの差だからちょうどいい( ´艸`)
いつか並んで歩きたい。そんなことを考える毎日。遅刻するわけ、ないよね。
ある日、グーゼンにも彼と超近い距離になった。私としては嬉しい反面、緊張のあまり顔が強張ってるかもしれないと、青くなった。
呼吸が荒くなったら恥ずかしい。吐息が彼に届かないよう、必死になる距離。つまり、真ん前なわけ。
私、たまらず下向いたの。そしたら、満員電車の悪戯は、私たちをぐっと寄せあったんだ。私の顔は、彼の胸板にぶつかった。とくん、という音が聴こえた。彼のシャツからシトラスの香りがした。
顔、あげらんないよっ!
そう思ったのに、次の瞬間、見上げてしまった。
「ごめん大丈夫?」
私に声かけてくれてると気づいた瞬間、目が覚めた。
ここのところずっと同じ夢を見てる。だけど今朝は彼とぶつかった。見上げてしまった。
今日私は、高校生になって初めて、二度寝したいと思った。サトシ君の温もりを、もう一度確かめたくて、思わず枕をぎゅっとしたのだった。