早智子と聡美は、聡美の夏休みを利用して、義人の墓を探すことにした。
2人の関係は良好ではなかったが、墓は必要であり、いつまでも彼のお骨をマンションに置いておくわけにもいかないことは、聡美にもわかっていた。
だが2人とも義人の思い出に浸ることは癒やされた。お互いに義人が恋人、父親の一面を知らないゆえ、話が尽きることはなく、2人の距離は縮まっていった。
早智子は、それを嬉しく思う一方で、実母美沙との件をどうすればよいか、考えあぐねていた。ただ、2人の間のわだかまりが氷解していくのが何より心地よく、夏休みをそのままに過ごしていった。聡美も、あえて触れないようにしているかにみえた。
墓地は、2人で色々考えた結果、義人が好きだった高尾山の近く、緑豊かな霊園に決めた。
代金支払いをすませ、お参りに行こうと思ったとき、やはり美沙についても考えないわけにはいかなかった。
いきなり3人で行くのは性急すぎたし、また早智子の存在意義も突然分からなくなるのが嫌だった。
考えた末、早智子は美沙に電話をかけた。
「あの人の、お墓が決まったんです。今度の日曜日、聡美ちゃんとお墓参りに行くつもりです。もし、聡美ちゃんを一目見たいのなら、その時そっとご覧になりませんか」
美沙は、対面したがったが、早智子は、聡美に気持ちの整理をさせる時間が必要だと何とか押しとどめた。
そんなことが実母とやり取りされているとは聡美は知らず、ずっと仕舞われていたうさぎのぬいぐるみと遊んでいた。
彼女がぬいぐるみに母性を注ぐ様を見るにつけ、早智子は胸が締めつけられた。
本当は、聡美に本物のうさぎを与えてやりたい。だけど、私にはそんな資格などない――。
早智子のそんな思いをよそに、高尾山に行く日曜日がきた。私と聡美は義人に会い、美沙は聡美をそっとみる。
運命とは、なぜこれほどまでに人を翻弄し複雑にさせるのか。
早智子は、3人が皆幸せになることを切に願いながら、義人の元へと向かっていた。