俺の長年の夢、透明人間。ついにその薬が完成した。たやすい道のりではなかったが、完成したならすべての苦労も報われるというものだ。
俺は完成した薬を一息に飲んだ。苦味が舌に広がる。心臓がきゅうと締まる。ブラックアウト(失神)しそうになるも、必死に一時の苦痛を我慢した。
やがて、視界が明るくなった。良かった。現実世界だ。そして、透き通った全身。驚いたことに、壁などの物体もすり抜けることができた。
ついに俺の世界がきた。誰にも気づかれず他人を覗くことができれば、あんなこともこんなことも可能だ…やり方次第では、世界を支配することだって可能だろう。俺は、気がつくと一人ずっと高笑いしていた。
自分のいた実験室を離れ、国会議事堂や監獄など、絶対に侵入できない場所へ行ってみたが、完全に透明人間だったようだ。
嬉しくなり、自宅に戻ってブログを書こうと思いついた。まずは声明文を書かなきゃな!
自宅に戻ると、妻が青ざめた表情で誰かと電話している。どうやら毛嫌いしていた俺の実家に連絡しているようだ。
ひとまず無視して俺の書斎にいく。すると、俺が横たわっていた。あっなるほど、幽体離脱的に透明になったのか。俺は自分の体に入ってみた。うんともすんともいわない…
あれ、ひょっとしたら…俺薬飲んだせいで死んだのか――。
パソコンを打とうとしたが、タッチすらできない。
こうして俺は、誰にも透明人間だということを証明できず透明人間でありつづけたのだった。