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【恵美】
「あいたっ」
目の前に散っていた星がおさまると私は驚きで声を出せなかった。私の前で倒れているのは金沼恵美38才だったからだ。
私の名前は金沼恵美のはず。どうして私が私の目の前で倒れているの?私は誰?恐怖に胃がせり上がった。次の瞬間両脇を抱えられた。「な、何?」黒服を着た屈強な男が太い腕を私に絡ませ私をみた。「お怪我はございませんか、総理」
は?
立て続けに起きる意味不明な出来事に私の頭はついていけない。だが、ぶつかった相手の「金沼恵美」も私と同じ動揺と必死に戦っているかのようにみえた。
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【鳩谷総理】
青天の霹靂とはこのことか。私の目の前には第78代目内閣総理大臣鳩谷由紀夫が豆鉄砲を食らった顔つきで私をみていた。
彼が鳩谷由紀夫だとすれば私は誰なのだ?いやこれは夢だ疲れているからに違いない…
頭をふるふるとした瞬間、赤茶けた長髪がまとわりついた。私は女になってしまったのか?私は先ほどまで警護していたSPに追い払われ、所在なく佇んでいた。あいつらがしっかり警護してればこんなことには…
【転校生】という日本映画を地でいく我が人生はどうなっていくのか暗澹となった。
【転校生】では再び互いに衝撃をぶつけあえばもとに戻れたはずだが、内閣総理大臣である彼女が私の目の前に来るという愚挙はおかさないだろうし、今回の衝突は庶民派アビールするがため偶然立ち寄ったスーパー。普段は首相が厳重警備されているのは私がよく知っている。
私が乗り移ってしまった女はただのフリーターのようで、器量もよくない。勉強や見た目でキャリアアップする時期を逃している。万が一にも私が大逆転の人生をかっ飛ばすことは難しいに違いない。だいたい、資産家のもとに生まれたサラブレッド、しかも首相という人生以上のものなどこの世に存在するだろうか?
せっかくいい人生だったのに――
仕方ない。人間辞めるしかない。私は自らの命を絶つことにした。そして、宇宙人としての生活に戻る決心をした。