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「それで、どうするの?」
「発信機をつける対象を見極めなければならないだろう」
大二郎はそういうと、窓をそっと開けた。大通りに面し、高層階にあるおかげで、話し声を立てなければ階上のベランダに気遣う必要はなさそうだったが、大二郎は慎重に窓を閉めた。
天井の換気ダクトを見つけると、椅子を使って静かに押し上げた。
天井裏には体重の軽い佐知子が進入した。溜まった埃から、他が進入した形跡のないことを確認してから、奥へ進んだ。
永沢は建築申請の際に提出されたホテルの見取り図を入手していた。佐知子はそれを頼りに、ベッドの位置に向かって手探りで進んだ。
勘を頼りに盗聴器を設置し戻ると、大二郎が興奮した様子でイヤホンにかじりついていた。
佐知子は埃をはたくのももどかしく状況を聞きたかったが夫に目で制され、じっと見守るよりなかった。
やがて、大二郎はイヤホンを外して佐知子に言った。「奥村が生きていた」
佐知子は、大二郎の目に憎しみが見えた気がしたがそれも一瞬のことで、気にならなかった。それより、奥村の生存という情報に意識が向けられたのだった。
佐知子には、奥村が生きていることが日本にとって良いことなのかどうか、分からなかった。だが、一個人として複雑ではあるがやはり喜んでいる自分に気づかずにはいられなかった。
大二郎は、班のリーダーと連絡をとっていた。少なくとも、奥村に発信機をつけることだけは確定したようだった。
(つづく)
この小説はフィクションであり、作品に登場する団体や個人は実在しません。