次の日、エヌ氏はパチンコ屋に向かったが、やる前に2万円に増えたのだった。
両替所で1万円を拾った。立て続けに幸運が舞い込むと、エヌ氏の射倖心は恐怖に打ち勝った。慌てふためき彼のいた路上に走った。
彼は、笑顔で出迎えた。もはやエヌ氏は、彼の不衛生な格好や体臭など気にならなくなった。むしろ、神のオーラだと思い込んだ。
神はエヌ氏に告げた。「わしの言うようにすればよい。ただそれだけじゃ」
それからのエヌ氏はまさに神がかっていた。たった一枚の一万円が、FXや株式投資、Reitにまで手をつけたが連戦連勝、エヌ氏の総資産は二百万円にまで積み上げられた。
彼に足を向けられないエヌ氏は、神と崇めた。彼の気が変わらぬよう無理やり自宅に呼び寄せた。福の神ともいうべき彼を独占したくなったのだった。
「我が家でくつろいでください。きれいな服も揃えましたし、お風呂にも入ってください。あなたは神なのですから」
「わしはそのままのほうがええんじゃがな…」
散髪もして小綺麗になった彼は、すっかり見た目は普通の年配者にしかみえない。
しかし彼の神通力はとどまるところを知らず、エヌ氏の総資産はついに一億円を突破した。
エヌ氏はもはや彼なしの人生など考えられなかった。高級マンションに住み、贅沢三昧の日々にどっぷり浸かってしまった。
そんなある日、いつものように彼に指示を請うと、彼はエヌ氏に向かっていつもと違う口調で囁いた。「そろそろじゃの」
「何がでしょうか」
「お主はもう充分に稼いだじゃろ。そろそろ止めにせんかの」
「神様、それは無理というものです。不動産に担保設定してまで銀行から借り入れ、投資の準備をしているのです。今走るのを止めたら、凄い損失ですよ。いや無一文になってしまいます」
「だが、お前にはまだ財産は残るじゃろ。経験と知識がな。わしも無一文じゃが、食うのに困ったことなぞない」
「神様とは違います…本当に困ります!私を見捨てないでください」
泣き声まじりのエヌ氏に、彼は困った口調で答えた。「むしろ、助けようとしとるんじゃが。なぜなら、次のお告げは命がけになるからなのじゃ」
(続く)