ランディの痛みにあえぐ声が診察室に響くなか、オジーとシャロンはバトラー医師と向かい合っていた。
「正直いって、病状は進行しています。そんななか、投薬治療や放射線治療を彼に施すことは、かなりの苦痛を与えます」
「助かる見込みは?」
「成功する確率はかなり低いといえます」
「そんな…あんたが名医だというから、はるばる来たんだ!頼む!あんたの望むものは俺が何とかする、だから、だから…」
オジーは泣き崩れた。シャロンも悲壮な面もちで呆然としているなか、ランディは床にへたりこんで、くぅと鳴いた。
「このまま何もしなければ、半年ともたないでしょう。手術に成功したとしても寛解といわれる状態になる可能性は数パーセントに過ぎません。
「私はこういった場合、患者の意志を尊重したいのです。つまり、
ランディがわずかの可能性にかけても、生きたいかどうか、なのです」
「俺やシャロンは、ランディなしの人生は考えられない」
「しかし、オズボーンさん。ランディはいつか死を迎える。私たち人間と同じように」
「………」
「死は難しいテーマです。正解などないでしょう。しかし、個別に考えると、少なくとも不正解は見えてくるものだと、私は考えています」
「ランディは生きたいと強く望むなら、あなたはどうすべきか…じっくり考えてみてください」
ランディ………
オジーとシャロンは、じっくり考えることにした。その夜は、3人でホテルに宿泊し、家族会議を行った。
しかし明確な結論はでなかった。翌日、オジーは仕事でいったんカリフォルニアに戻らなければならず、やむなくランディは病院に入院させ、シャロンは引き続きホテルに残ることとなった。
2人が入院手続きをしていると、ランディは息絶え絶えになりながらも、2人をじっと見つめているのだった。
見捨てるわけじゃないんだ。
病弱のお前は、今は病院にいたほうが安心だろ?
オジーはランディの頭をなで、彼の目に光る涙をぬぐってやった。
ランディはその時だけは、嬉しそうな表情を見せた。
(続く)
※本作品は、アメリカの実話を元にした小説です。