せっかく異動したのに…俺は泣きそうになった。
何故なら、半年前まで俺の天敵だったS課長も同じ部署に異動してきたんだ。
何の恨みがあるんだよ!
思わず声に出してしまった…課長の前で。
恐怖に顔が固まる。Sの引きつった笑顔が近づいてくる。覚悟を決めた。もうどうにでもなれ
…と思った瞬間、俺はベッドから跳ね起きた。
良かった夢だ!
思ったのもつかの間、今日は半年かけて取り組んできた企画の合同コンペの日だと、気づいた。
プレゼンは俺がトップバッターなのに、時計はとっくに業務終了を告げていた。
おそるおそる携帯を開くと、着信20件…
信頼関係を築いてきた上司から、「死ね!」などと罵倒された録音が二件と、
彼女からのモーニングコールが数件。
「あたし知らないからね!」と匙を投げられている。
そりゃそうだ、もう俺クビかも…
これからの人生どうしようかと考えてたら、首が落ちた。
山手線に揺すられ、目覚めたようだ。マジかいや!また夢だったんかい!
何はともあれ良かった…。
そう思った瞬間、激しい振動が俺を襲った。
併走していた埼京線車両が、曲がりきれずに山手線に激突したのだ。
この衝撃は本物だ!こんな狭い空間で死ぬなんてイヤだよ…
初めて、自分の人生を呪った。
痛い痛い痛い!
叫びながら、苦痛に耐えていると、闇だった目の前が少しずつ明るくなる。
やった!今回も夢だったんだ!
明るい視界の先がはっきりしてくると、光の正体は照明だった。
見渡すと、手術室のようだ。さっきの事故は夢ではなかったのか?
しかし助かったんだ!痛みに耐えれば、生きることができるのだ!
俺は嬉しさのあまり、視界を照明からメスを持った医者を盗み見た。
刹那、俺は人生をあきらめた。
術衣とマスクに隠れてはいるが、眼鏡の奥に光る鋭い眼光は、まぎれもなくS課長のそれだったのだ。
了