いつも帰宅の遅い父親が早めに帰ってくると、転校の時期なんだと少年は感づいた。
裁判官である父は三年周期で全国の地方裁判所に配置転換されるのが常だった。
中学入学から2年間、友人もできた少年は、彼らと卒業出来ないことを悲しんだ。
とりわけ、仲良くしていた男女3人組には、伝えるのがつらかった。
そこで、担任の先生には、同級生には内緒にしておいてほしいと頼んだ。
少年だけが知る、最後の季節。
新緑からこぼれる太陽の光も、
アスファルトに打ちつける規則正しい雨音も、
少年を独りきりにさせた。
時折、3人組は少年の異変を感じることがあったが、
互いに干渉しないことで心地よい関係を保ってきた彼らは、少年に問いただすことはせず、
少年が心を開くのを待った。
初夏が訪れ、中間テストが始まった。
少年は勉強もせず、遊びほうけた。
3人組は心配し、忠告したが、逆に少年は誘いを断るなんて友達じゃないと不機嫌になった。
少年は孤立した。
自暴自棄になった彼は、ついに当日まで転校の事実を話さなかった。
転校当日。
クラス担任から、少年の転校が知らされると大きなどよめきがおこった。
興味津々で質問してくる者もいたが、大半は受験勉強に精いっぱいで、一言二言話す程度だった。
少年は、夏が終わったと思った。
帰り道、入道雲を見つめながら自転車をこいでいると、
3人組のうちのひとりの少女が途上に待ち伏せていた。
少年は自転車をおり、何を話そうか考えあぐねていた。
少女は、不思議な笑顔を少年にむけた。
よかった。吹っ切れて
少女が走り去ったあとも、少年は彼女の残した言葉の意味を考えていた。
彼女の気持ちを理解できた瞬間は、少年にとって忘れられないだろう。
了