◆4月17日午前0時10分◆
主な登場人物はこちら>>
救命センターへの奥村の死亡連絡は、どういう訳か外務省の岡本と名乗る人間からだったと、
佐知子は救命センターの人間から聞くことができた。
葬儀も密葬で済ますという。
「スピード」に真っ向から立ち向かった人間に対する仕打ちではないと、佐知子は憤った。
だが国家的危機にみまわれているさなか、
情報はなるべく秘匿したいのだろうことは、佐知子にも想像できた。
せめて、一目、最期の別れを告げたい。
佐知子は一呼吸おくと、大二郎の病室へ向かった。
*******************
奥村を奪われた際に襲撃を受けた大二郎は、救命センターで処置を受け、一泊入院していた。
「久しぶりの夫婦水入らずが病院とはな」
大二郎はまんじりともせず、病室の天井を見つめながら、入室してきた佐知子にそう言った。
佐知子は目で頷いた。伏し目になったが、聞かない訳にはいかなかった。
「奥村君がどこにいるか、調べてほしいの。密葬なんて、あんまりよ」
大二郎の表情は読み取れない。規則正しい呼吸がかすかに聞き取れた。
「…葬式に参加できると思うか?」
佐知子は夫を見据えた。
「できるできない、じゃないわ。彼に関わった誰かが送り出すべきよ。
奥村君はとても優秀な研究者で、研究センターに大きな功績を残した。
この病院でも多くの人命を救ってると思うわ。
そんな人に何もしないなんて、国は間違ってる」
「…正論だな。だが正論を通せる次元では…」
「調べてくれるだけでいい。私もあなたも、彼の将来を潰した責任がある。うちを辞めず、救命センターで働いていなければ、彼は…」
「…わかった。場所を調べるよ」
奇妙なことに、二人は積年のわだかまりが融け始めるのを感じていた。
(つづく)
この小説はフィクションであり、作品に登場する団体や個人は実在しません。