パニック小説【感染者-Season3-】第2話 | 相武万太郎オフィシャルブログ「六転び七転び八転びROCK。」(音楽、小説、酒)

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ベッキーがテレビに出てるとチャンネルを変えてしまう男が、好きな音楽や小説を語ったり書いたりらじばんだりしています。音楽は洋楽ロックメインだったが最近はハロプロ大好きです。特にANGERME。

◆4月17日午後11時00分◆



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新宿という街は、夜のとばりがおりることはない。





ネオンがひしめく街中にある新宿区救命センターも例外ではなく、

夜特有の静寂のなかに怒号と喧騒が飛び交っている。





佐知子は未だ、スピード対策本部が撤去された後も、ここ救命センターに居残っていた。





奥村の生い立ちを知る佐知子は、居場所の糸口をつかまずに、立ち去ることなどできなかった。





奥村は、自分の過去を話してくれるタイプではなかったが、

かつて一度だけ、孤児であることについて佐知子に語ったことがあった。





ただ、自分の地位を確保するために、必死に努力したわけではなく、

好きなことに熱中していたら、大学院まで行けた(もちろん奨学金制度を利用したらしいが)とこともなげに語った。





奥村に親族がいないのであれば、

何かあった時の連絡は救命センターに入るはずだった。





「スピード」の進行速度からいえば、奥村は既に死亡している。





身よりのない奥村に自分ができることは、

心こめて来世に送り出すことだと、佐知子は考えていた。





涙も悲しみも訪れないことを佐知子は知っていた。





昨年、自分の母親を亡くした時、それらが降りかかってきたのは葬儀を終えた後だったのだ。





佐知子の悲壮な覚悟によっても、0時を過ぎようとしたその時に入った、奥村死亡の連絡は、

打ち消すことも衝撃をやわらげることもできなかった。









(つづく)

この小説はフィクションであり、作品に登場する団体や個人は実在しません。