◆4月16日午後6時00分◆
佐知子が10コール目で通話をあきらめた時、
大二郎は気を失っていた。
床に臥した大二郎の隣には奥村が寝かされたベッドがあった。
衰弱しきった奥村はもはや断末魔すら叫ぶ気力を失っており、
誰の目にも死期が近いことが明らかだった。
ギャッヂベッドのキャスターのロックがことり、と外され、
静かにICUから移動されていく。
ベッドに備えつけられていた奥村の心拍計は弱まりつづけていたが、
佐知子がICUを探り当て、奥村と入れ違った瞬間、
間断的だった電子音がツーという抑揚のない音になった。
奥村の心停止は、佐知子に知られることなく、廊下に静かに鳴り響きながら、遠ざかっていった。
「あなた?!どうしたの!奥村君はっ」
揺さぶれた大二郎は、首を振りながら、身を起こした。
何が起きたのか分からない様子だったが、
奥村のベッドがないことを知ると青ざめた表情でつぶやいた。「何が起きているんだ…」
(つづく)
この小説はフィクションであり、作品に登場する団体や個人は実在しません。