◆4月16日午後1時45分◆
奥村は、自分の仮説を頭の中で進めた。
奥村は、これまで、ウィルス「スピード」によって人体内部で出血すると思い込んでいた。
「スピード」によって癌細胞が形成されるのは疑いなく事実だと考えられるが、
出血はどうか。
確かにウィルス侵攻中もおびただしい出血があるが、
「血」が潜伏していたウィルスを覚醒させるのだとしたら?
「スピード」と「血」の死のコラボレーションが、今回の感染症の正体なのかもしれない。
ヒアリング結果によれば、感染者が元々出血していた可能性は高い。
例えば。
先ほど死亡した70才老人は、「スピード」によって脳出血を引き起こしたのではなく、
脳出血が「スピード」を覚醒させたのだ。
突然、奥村は、インターフォンの音で現実に引き戻された。
だが他の者に任せることに決めこみ、缶コーヒーを一口飲むだけで再び仮説検証に戻った。
最初に運ばれた20才女性はどうか。
彼女は、全身の中では胃からの出血が最も多かったが、
取り寄せた彼女のカルテから推測するに、ストレス性胃炎による出血だと考えられる。
奥村自身も、ストレスで胃がやられて出血することが間々あり、
さっき食べたサンドイッチを消化するのが辛いのか、
チクチク痛みだした。
腹部をさすりながら、缶コーヒーをすすっていると、デスクに放置してあった携帯電話が震えだした。
めったに受信することのない電話をいぶかしみながらも、
携帯画面を確認してみると、
アドレス帳から消せなかった、「三崎佐知子」の名前が表示されていた。
(つづく)
この小説はフィクションであり、作品に登場する団体や個人は実在しません。