小説【夢みるメタボリック】第2話 | 相武万太郎オフィシャルブログ「六転び七転び八転びROCK。」(音楽、小説、酒)

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ベッキーがテレビに出てるとチャンネルを変えてしまう男が、好きな音楽や小説を語ったり書いたりらじばんだりしています。音楽は洋楽ロックメインだったが最近はハロプロ大好きです。特にANGERME。

「待ってぇぇぇ!まだ」



他人に無関心な群集から、
甲高い声が石本三郎の耳を突き抜けた。



まだって何のことだろうと、思わず振り向くと、
前のめりの姿勢から飛び込んでくる女性の頭頂部がみえた。



勢い、女性の頭を石本のせり出た腹で受け止める。



「大丈夫ですか?」

むせながらも、女性の安否を気にする自分は馬鹿なんだろうかと考えていると、
その女性はこちらを見て、言った。


「ありがとうございます。おかげで靴、買えました」



よくみると、確かさっき百貨店の靴売り場で譲ってあげた女性だった。



「すっきりしました。でも、もうひとつ言いたいことがあるんです」


その彼女は勝ち気そうな視線を石本に向け、続けた。

「せっかくのハイヒールが、あなたをとめたせいで傷ついちゃいました。


飛びこむのは、代わりのものを買ってもらってからにしていただけますか?」



思わず、石本は笑った。

本気半分、気遣い半分かもしれないが、
久しぶりに人のあたたかさに触れた気がした。



「何がおかしいんですか?」
女性はふくれっ面をみせた。



「失礼、アカの他人のあなたが、私のような者をとめるのがおかしかったんです。


とにかく、申し訳ないですから、靴の代金はお支払いします」


彼女はなおもにらみつけ、こう言った。
「このハイヒール、本当に気に入って買ったんです。

気に入るものが見つかるまでご一緒していただかないと、
値段が分かりませんから」



屁理屈のような気もするが、
自殺を思いとどまらせたいからなのだろうと思うと、
涙が出そうになった。



他人にここまで気にかけてもらうのが面映ゆい反面、
自己嫌悪にも陥った。



しかし、公衆の面前で美人にここまでさせておきながら、
足蹴にはできない。



いつの間にか、人だかりのできていた。


石本は輪をかき分け、百貨店の靴売り場をめぐることにしたのだった。






(つづく)