「はぁ…行きたくないなぁ」
「研修も終わったし、いかないとな」
長い間、隣りあった者同士、
出発を翌日に控えた不安と緊張を紛らわせるため、
愚痴を言い合った。
「昔ながらのルート営業だけじゃ未来がない なんて経営トップはいうけどさ、
実際、うちの会社がつぶれたら、日本終わりの日だよな」
「インフラ分野だしな」
「この数十年、新規開拓に成功した先輩なんていないよな」
「いいところまで行くんかもしれないけど、
そもそも土壌がないと思う」
「そうだよな、がんばっても結局、門前払いだからな」
「…でもさー
「ウチ、従業員の数だけは毎年ハンパなく採用するからなぁ」
「年によってバラつきあるけどさ、
うまくいった試しがない事業にかなり投資してるんだぜ」
「まぁ、経営トップはそれだけ既存のセグメントに危機感あるんだろうけど」
二人はため息をついた。
ヒトに受粉させようというスギグループの試みは、業界の総意だ。
ヒノキホールディングスやブタクサ産業をはじめとする同業他社も躍起になっているが、
ヒトはマスクや緩和剤で対抗している。
ヒトが畑になれる訳がない
新規開拓営業部は皆思っている。
しかし、ヒトはなぜ、技術力がありながら、
抑制剤(緩和剤ではなく)を作らないのだろうか
この疑問が彼らに一握りの希望を与えているのだ。
ひょっとしたら、ヒトは受粉させてくれるのではないか?と。