小説【禁煙できない男】第5話 | 相武万太郎オフィシャルブログ「六転び七転び八転びROCK。」(音楽、小説、酒)

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ベッキーがテレビに出てるとチャンネルを変えてしまう男が、好きな音楽や小説を語ったり書いたりらじばんだりしています。音楽は洋楽ロックメインだったが最近はハロプロ大好きです。特にANGERME。

その日も、康雄は何気なく胸ポケットをまさぐった。



まだ真新しいケースから一本の煙草を取り出す。



慣れた手つきでZippoをはじくと、
目の前にゆらゆらと火が灯った。


もう禁煙なんてやめよう。



目いっぱい空気を吸い込むと、タバコをくわえた。



マルボロの味を確かめようとするまさにその瞬間、目が覚める。



心臓が痛い。

体中、いやな汗をぐっしょりとかいている。



毎日のように見るこの夢は、
現実との境に戸惑うほどのリアリティを康雄につきつける。



煙草からの誘惑と、ニコチンの禁断症状は途切れることなく康雄を襲う。



精神的疲労の度合いは日々増すばかりで、
左官工としての評判にも影響を与えているほどになった。



仕事仲間からは顔色を心配された。


八つ当たりする家族がいないのが幸いだったが、
付き合って3ヶ月の彼女には禁煙開始から1ヶ月もしないうちに別れを告げられた。



誰と話していても、煙草のことを考えている。



たかが煙草にこれほど追い込まれるとは想像していなかった。



Zippoを握りしめ、火をつけては消した。



衝動的に買った未開封のマルボロは、1カートン以上になってしまった。



どうしても禁煙しなければならない。


憎い健雄に勝ちたい、それだけの思いが康雄に禁煙させていた。



しかし、その思いとは裏腹に、体が無意識に動いてしまう。



知らないうちに、火のついていない煙草をくわえていたこともあり、
慄然とした。



もはや意志だけでは煙草を絶つことができないのだろうかと、康雄は懊悩した。



煙草をやめてから、心身ともに病んでいく自分に反吐が出る思いだったが、
どんな手段を使ってでも健雄に勝たなけばならないと、また己を鼓舞させた。



そして、一つの考えが浮かんだ。



静寂が沈黙を破った。


握りしめていたZippoを窓ガラスに投げつけた。



夜のしじまに甲高い破裂が響いた。



康雄はのっそりと闇から立ち上がると、仕事で使っている電動鋸(ノコギリ)を手にとった。


刹那、康雄の口元が怪しく歪んだ。






第5話につづく

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