「ついに」


と先輩が言ったのは、二つくらい理由があったのだと思う。


1つは、ここ最近急激に距離が近くなり、お互い意識下ではその先に行きたいという思いが少なからずあったということ。


もう1つは、わたしたちが周囲からは、デキているとされていたこと。

女遊びが激しい先輩のすぐ近くで仕事をしていて、しかも一緒に仕事を始めてからとても仲がよかったから、だいぶ前からそういう関係になっているだろうと誰もが思っていたようだった。


でも、わたしたちにそういうことは一切なかった。

このときまでは。


だから、先輩がぼそりと言ったその言葉に、わたしは思わず笑ってしまった。

くすぐったい言葉だった。


初めてした先輩とのキスは、今でも思い出すとドキドキする。

大きい背中に腕を回して、体を預けたあのとき。


あの日から、わたしの人生は大きく変わっていった。