一年前の今頃、わたしは職場を少し離れ、約一ヶ月の研修期間に入っていた。研修所に舞い戻り、きゅうくつな生活だった。そのとき、職場の先輩から、「早く帰っておいで」とメールと電話がきた。


わたしは研修所を初めて出てから、慣れない職場での自分の位置が定まりきらず、悩みながら仕事をしていた。こんな対応をされるほどえらい人間でもないのに、入り口が違うというのは不公平だと、自分のことなのに悲しくも思っていた。自分に合うのはこの道だったんだろうか?そんなことをずっと考えながら、働き続けていたときだった。


先輩からのメールと電話で、自分ががむしゃらにやってきたことが無駄じゃなかったと言われたような気がした。


そんなことを先輩は考えていなかっただろうけど、不思議なくらい、わたしは幸せな気持ちになった。

先輩はお世辞を言わない人だし、人に媚を売る人じゃない。だからこそ、先輩の言葉がとても嬉しかった。


先輩は、わたしが研修所を出てからずっと、一番近くにいた人だった。休みも不規則なこの職場で、毎日のようにそばにいて、下っ端の仕事を教えてくれた人だった。一番、信頼していた。



当時、わたしにはまだ学生の彼がいた。仕事はとても忙しかったけど、なんとか時間を作って会うようにしていた。彼のほうが時間もあったし、わたしが時間を割かないことには会えなかったから。その分、わたしは犠牲にしたものもあった。でもそれが当たり前だと思っていた。