若葉しげる | 演劇実験室◎天井桟敷の人々

演劇実験室◎天井桟敷の人々

寺山修司が率いた演劇実験室◎天井桟敷、そこにどんな人々が集い、その後の人生に「体験としての天井桟敷」がどのように投影されていったのかとても興味があります。
退団後の1000余の生き様、それもまた寺山が仕掛けた壮大な劇なのかもしれません。

 
 
 
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若葉 しげる
 
青ひげ(1968年)に出演していますが、この作品以外に名前は
見当たりません。客演だったのでしょうか?
 
現在は「若葉劇団」の総帥として座長以下劇団員を束ねつつ、
現役の女形として活躍しています。
(The king of  女形とも呼ばれているようです)
 
 
弱冠16歳で劇団を設立したとのことですから
「青ひげ」上演時は既に劇団を率いて精力的に全国を
巡演していたものと思われます。
 
寺山と若葉の出会いについてはわかりません。
演劇界の対極に位置していた二人がなぜ・・・
 
寺山は見世物・大衆演劇・香具師などが最後の輝きを放っていた時代に
幼年時代を過ごしています。
非日常的な世界に眼を輝かせ心を躍らせた原体験が
「見世物の復権」を劇団の設立宣言に通底していたことは
いうまでもないでしょう。
 
若き大衆演劇のスターは寺山にとってうってつけの存在だったに違いありません。長く寺山にとって若葉は劇団に留まってほしい逸材だったことでしょう。
ただ、若葉は既に劇団を率いてて多くの劇団員の生活を保障しなければ
ならない事業主でもあったわけで、天井桟敷での活動を断念せざるを得なかったと思われます。
 
 
若葉は寺山より数歳年下ですが、現在も若い者にも負けないほどの
激しい舞台をこなし、艶姿を披露して、巡演先の観客を魅了しておられるとのことです。
 
 
大衆演劇ファンの方の劇評を見つけました。
 
若葉劇団】(座長・若葉愛)〈平成24年2月公演・大宮健康センター湯の郷〉
劇場案内には「大衆演劇公演二十年、今月は二十一年目記念公演!」と銘打っている。その中で、座長・若葉愛は「久しぶりの公演です。笑って泣いて感動の舞台をごらん頂きます。見て下さい。楽しんで下さい」という一言を記しているが、おっしゃるとおり、私が彼の舞台姿を観るのは、何十年ぶりであろうか。初見は、昭和46年、千住寿劇場で、座長・若葉しげるが(おそらく)32歳、その息子・若葉愛(当時は若葉みのる)が(おそらく)15歳頃である。爾来、幾星霜、総帥・若葉しげるは今年(おそらく)72歳、若葉愛は55歳という計算になる。私にとっては、文字通り「久しぶり」以外の何ものでもない。芝居の外題は昼の部「上州わらべ唄」、夜の部「大島情話」、いずれも大衆演劇の定番だが、とりわけ座長・若葉愛の風情が魅力的で、たいそう面白かった。彼の芸風は、一見すると「単調」「不器用」だったが、それに数十年の「年輪」が加わって、えもいわれぬ「味」が滲み出ている。出身は大阪と聞くが、景色は「関東風」、どこか梅沢富美男と通じる気配が感じられる。「上州わらべ唄」では、大岡越前守役、風貌は凜としているが、言動は軽妙・洒脱。「そこの女、名前は何と申す?」「はい、おしまと申します」「そうか」と言ったが、しばらくすると、また「そこの女、名前は何と申す」と繰り返す。そのとぼけた「味」が絶妙であった。それは「大島情話」でも再現、島の浮浪人よろしく、若い男女に絡む。「ここはどこだ」「大島です」「そうか佐渡島ではなかったか」、行き過ぎようとして引き返し、「ここはどこだ」「大島です」「そうか佐渡島ではなかったか」・・・。大詰めで、居酒屋に再登場したときには、観客の方から「ここはどこだ!」というチャチが入ったが、客席を睨んで一言、「ここは大島サ」と応じるやりとりが何とも可笑しかった。女将役の総帥・若葉しげるから「何だい、あの男!だらしがないったらありゃあしない、舌も回らないようだ」など言われて、「ウルセエー、ばばあ!」と怒鳴り返すやりとりは抱腹絶倒、「久しぶりに」私は笑い転げたのであった。察するに(私の勝手な想像だが)、この親子の数十年は、まさに波瀾万丈、「愛別離苦」「諸行無常」の連続であったに違いない。必ずしも「芸道一筋」とは言えない紆余曲折が、そのまま舞台模様に「浮き彫り」されて、この劇団ならではの空気が漂っていた。それにしても、総帥・若葉しげる、37度の発熱にもかかわらず、舞台狭しと駆け回る。その「役者魂」は斯界の鑑、それに応えるかのように、歌舞ショーで歌った座長・若葉愛の「瞼の母」もお見事。「久しぶり」の感動を頂いて、帰路に就いた次第である。
 
若葉は「お母さんのお弁当箱」という、
広島の原爆で死んだ子を追想する母親を演じる一人芝居)、
さらに
座長若葉愛との二人芝居「知覧の母」を劇団の重要なレパートリー
としています。
大衆劇団には詳しくないのですが、反戦・平和をテーマとした作品は
珍しいのではないでしょうか。
 
総帥、いつまでもお元気でご活躍ください。
 
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