(『人間革命』第10巻より編集)
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〈険路〉 30
六月十二日、公示とともに、全国で会員は、それぞれ支援活動に懸命に動きだした。
大変な人数である。
これほど多くの人びとの応援を得られる候補者は、学会の推薦候補を除いて、今回の三百四十四人の候補者のなかには、一人もいなかった。
創価学会を、貧乏人と病人の集団ぐらいに考えていた世間は、活動の様子を、連日、目にするにつれて、驚愕に変わっていった。
対立候補者たちにとって、中盤戦あたりから一種の脅威となったことは、自然の推移であった。
日がたつにつれて、さまざまな憶測が生じたようだ。
憶測は、さらに疑心を生み、疑心は、さらに、あらぬ中傷へと変わっていった。
警察当局への、まことしやかな投書をした者もあったろう。また虚偽の密告をした者もあったろう。
警察当局は、”それっ”とばかりに各地で動きだした。
当時、取締り当局にとって、創価学会というものが、まことに不可解な団体に見えた。
つまり、彼らの常識では、理解できなかったのである。
警察当局の憶測に基づく嫌疑は、おそらくこうであったろう。
ー あれだけの動員をするからには、それこそ膨大な資金が流れているにちがいない。資金がどこから出ているか、資金源を突き止める必要がある。
また、あれだけの人数が、一斉に動き出したところをみると、どこかで強力に号令をする者がいるにちがいない。
宗教に名を借りた、政治団体でなないのだろうか。
疑心から、陰謀的な教団と決めつけて、警察は各地で内偵を始めた。