高村薫「地を這う虫」 | 休日の雑記帳

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可もなく不可もなく、ほどよく楽しめる短編小説。移動のお供などにお勧めです。

☆あらすじ☆

様々な事情から刑事を退職した男たち。刑事を辞めてなお、刑事としての適性や矜持を維持しつつ、その後の人生を生きる姿を描く。

お勧め ★★★☆☆

ヒトを守る仕事って、かっこいいですよね。警察とか自衛隊とか消防士とか、そういう職業の人に憧れます。この短編集は、そのような仕事から抜けた男たちの、その後の物語です。

もう刑事ではないので、派手な事件が起こるわけではないのですが、日常生活を送るだけでも元刑事としての習性や思考回路が抜けていない様子が面白い小説でした。

ハラハラ、ドキドキしながらページをめくるような本ではありませんが、ほどよい面白さと読みやすさで、余韻が残る作品集でした。

「地を這う虫」というタイトルから、よほどの辛酸を舐めながら、懸命に生きる男たちの姿を想像していましたが、そういう話でもなかったです。

「愁訴の花」「地を這う虫」「巡り逢う人びと」「父が来た道」の4編が収録されていますが、どれもほんのりと哀愁が漂い、読み終わった後に「そうか・・・」というため息が漏れそうなお話でした。 

「わかる!」とか「なんで?」とかではなく、「そうなんだ」という気持ちになる。元刑事という、少し独特な人生を歩んできた人たちの考え方や行動は、理解できるとか、できないとかではなく、そうなんだ、と思わせるものでした。

元刑事でありながら、あるいは元刑事だからこその苦悩や迷い、葛藤など。そうなんだ。というのが一番簡潔な、この小説への読後感です。

興味を持たれた方は是非ご一読を。