志村けん・沢田研二の「鏡コント」を考察する。 | 世界の中心で人間以外が叫ぶ

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お笑い芸人などの一発ギャグや決まり文句について考察しています。

志村けんが行なうコントの

1つとして知られている「鏡コント」は

「ドリフ大爆笑」や「志村けんのだいじょうぶだぁ」などで

いしのようこ(姉である石野真子とのコラボも実現している)や

優香などと披露する事もありましたが

広く知られているのは

ジュリーの愛称で知られる

沢田研二との共演によるものでしょう。

 

「鏡」は御存じの通り、鏡越しに

人や物を、そのままの姿で映し出すものであり

このコントにおいても、最初の段階では

これが鏡であるのを、分からせるが為に

2人の動作を積極的にシンクロさせる事に

焦点を当てていくものの、時間経過と共に

段々とズレを生じさせていく事によって

笑いを生み出していきますが、厳密に言えば

最初の段階で、志村けんと沢田研二は

別人である為、服装などは

合わせて入るものの、既に違うものであり

視聴者もそれを、認識している訳です。

 

「欽ちゃん&香取慎吾の全日本仮装大賞」の

鏡をターゲットにした仮装でも見られるのですが

同じタイミングで、鏡の前に進入する、

鏡越しに手を合わせる、

リズムに乗せて手を叩き合うなど

分かりやすい動作を以って

これが鏡である事を表現する訳ですが

帽子を投げようとして投げない志村に対して

投げてしまう沢田、バナナを食べようとして

食べない志村に対して、食べてしまい

口にくわえたバナナを

まるで何事もなかったかのように

バナナの切れた断面に戻してしまう沢田

というように、ここまで来てしまったら

明らかに違う動作であるのに

誤魔化し切れていない誤魔化しを

どうにかして取り繕う様

志村側が、意図的に動作をズラそうと

画策さえしているのが分かり

途中から、鏡でない事に

明らかに気付いている、

つまり鏡ではなく、自分と同じ事を

必死になって、ついていこうとしている

別の人物に対して、イタズラ心が芽生えている

という雰囲気の振る舞いとなっています。

 

その証左として、キャラ的に沢田研二が

そこまではやらないであろうラインを

志村がついていこうとするものの

例えば、志村が得意している顔芸(変顔)を

沢田がやってしまうところもまた

このコントの面白さであり

バカ殿のメイクをして

「まさか、これをやらないだろう」と

踏んでいたものの、それすらも

やってしまう事で

留まる事を知らないコントとなる訳です。

 

そんな中でも、これは「鏡」であるという

姿勢を崩さないルールを

何とか守ろうとしている訳で

頑張ろうとするものの、志村の策略に

沢田が堪えきれなくて笑ってしまい

緊張と笑いが入り混じる中で

笑ってはいけないという

一種の義務感の中で、でも笑ってしまうの

無限ループが繰り広げられています。

 

ちなみに、沢田がテレビ画面に近い側を演ずる

逆転パターンもあり、この時は鏡に映る

自分の姿(志村)に対して

「なんか汚い顔だったな、今」

「脚は短いし、俺あんなだったかな」と

ボヤく様も見られたのでした。