『狼は泣かず』 虎よ! 虎よ! その2 | 平井部

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『その1』からの続きです。

 

 

 

 

 

そしてアニキ。

 

『人狼、暁に死す』篇と同様、今回も向き合うべきは“内面の影”でした。

 

 

凶々しい目が鬼火となって燃えていた。半ば物質化した悪霊、人の潜在意識の深淵から立ち現れた、たとえようもなく邪悪で不吉なもの。

 

 

殺し屋を惨殺した“虎”を見たアニキは、そいつに強力な力をもたらしていたのはアニキ自身だったことを悟ります。

 

 

 

人狼の不死性が、霊的なものであることは、郷子さまの言葉や、これからの展開によって明らかになりますが、おそらく強大な力を持つフォースみたいなものはいつもアニキと共にあって、そこにミキの呪的な心霊能力が指向性を与えて、“虎”が現出してしまったのでしょう。

 

 

“虎”と対峙して、アニキ自身も「陰惨な“業”を背負った生命存在のひとつ」でしかないことに気づく。

 

自分自身も、それまで憐憫を向ける存在であった、人類の一員であることに気づいてしまう。

 

 

同時に、どんなに手を尽くしても、結局ミキを救うどころか、破滅の途に押しやることしかできなかった事実も、アニキの魂にダメージを与えてたんだと思います。

 

かつて自分と関わることで、死ぬことになった数々の女性たちの面影も、アニキは決して忘れずに、魂に刻印しているはず。

 

 

なので、次作『人狼戦線』において、“過去の女性の代弁者”たるチコにはっきりと憎悪を浴びせられることで、心の臨界点を超えてしまって、人狼の不死性を喪うことになる……。

 

 

深み……😭😭😭

 

 

 

 

「潜在意識から立ち現れる虎」については、初期の短編『背後の虎』で既に登場していて、か弱い女性が無意識のうちに、恨みを抱いた(今作のミキに比べれば大したことない恨みに思えます)人間を狩り殺してゆくという内容です。

 

ドク・タイガーマンなど及びもつかないほどの超絶サイキックのようですが、物理的に生首を持ち帰るとか、ちょっと物凄すぎるので、憑霊現象の一種のようにも思えますね。

 

 

 

『スパーダーマン』の “虎を飼う女”篇では、エンディングにマナベプロの女社長や、ミキに辛く当たった女性タレントも、“虎”に襲われる描写があるのですが、黒枠になっていて、本当に起こった事なのか、はっきり分からないようになってます。

 

これが池上版『スパイダーマン』の最終回だったようで、連載時は“スパイダーマンの影”のすぐ後でした。ウルフ・プロットが連続していた。

 

ヒーローもののはずなのに、一度もスパイダーマンに変身しないという、なかなか攻めた回でしたが、高校生の小森ユウくんが夜の街でヤーさん相手に立ち回るという流れにはちょっと違和感もあって、どうも初めからウルフガイの為に降りてきたプロットだった感もありますね。

 

 

 

“屈折”点と言われた今作、『戦線』でアニキが回心を迎えるための重要な布石として、欠くべからざる一品だったんですね。

 

 

面白すぎる‼️