参院選挙真っ最中だ。
しかし、何と面白くない選挙となってしまったものだ。
その原因は野党・民進党にある。
本来この選挙の最大の争点は、
消費税引き上げを「やるか」、「やらないか」だった。
民進党はサミット前の5月から、安倍政権が消費税引き上げ延期をサミット後に打ち出すことを予想して、10%上げの2年延期を主張し、自民党の先駆けをしたつもりになっていた。
こうすれば自民党は、先伸ばしができなくなると読んだわけだ。
ここが、民進党が素人と言われる所以である。
それに対して、安倍は一向に民進党の案など気にも留めず、
「新しい決断として、消費税引き上げは3年半の延期をします」
と、いきなり会見で発表し、結局、民進党の選挙公約は二番煎じとなった。
だいたい消費税引き上げ延期については、法律改正が必要で、国会議決、それをしないでそのまま選挙戦になだれ込んだ。
消費税を延期すれば、その財源はどうするのか。
これも当然、法改正は必要で、とくに予算の組み替えは予算委員会で集中議論が欠かせない。それもせずに、選挙戦になったわけだが、その部分を追求しない野党のだらしなさはいかがなものか。
本来、消費税引き上げ延長の問題については、2%の不足分である5兆円をどうひねり出すかを焦点にしなくてはならないはずなのに、今日に至るもまったくこの議論は出ていない。
介護保険、健康保険、保育、震災復興予算、すべての予算関連議論は争点にならず、野党の野合と与党の安保関連法と憲法改正だけが争点になってしまった。
ここが安倍のしたたかさである。
街頭演説を聞いていても、
「野党は批判ばかり。対案がないから批判だけで終わっている」
「気をつけよう、甘い言葉と民進党」
とまで言っている。
対する民進党、いったいどうなっているんだ、この党は……。
消費税引き上げ延長による不足分は「赤字国債」で補うなどと平気で言う。
国際経済を知らないとこうした馬鹿な発言ができるからまた驚きだ。
今、世界はイギリスのEU離脱だけでなく、円の暴落に対しても準備を始めている動きが見え隠れする。日本経済の減退による損失を回避する流れがひとたび始まれば、世界は想像を超える勢いで日本から離れていく可能性をもはらむ。
そんな時に赤字国債で急場を凌ぐなど愚かな判断だ。
国債は未来へのツケと言われているが、それは真っ赤なウソ。現在進行中の危機だ。
スイスのバーゼル経済研究所などは、EU問題で円は上がるけど、本来日本の円は危険通貨になってもおかしくないと堂々と言う。
日本全体の債務残高は1000兆円を突破し、国民一人当たりの債務残高も800万円を超えている状況。その数字は、日本のGDPの2.5倍に相当する。
このような状況では、「江戸時代の徳政令をするんじゃないの?」という話が、まことしやかに囁かれよとも、仕方がないと思える。遅かれ早かれ、円が値下がるのは当たり前の流れなのかもしれない。
過去の歴史を振り返ってみれば、第1次世界大戦後のドイツのマルクは、国債の出し過ぎで暴落し、社会的および経済的な大混乱となった。そして、その後の世界恐慌により、ますますドイツ国民は不安を抱える。それらがひとつの流れとなり、アドルフ・ヒトラーが台頭していく。
歴史を学ぶことは、人生にとって本当に大事なことだ。
大きな流れ、大局を読むためには、過去の歴史を紐解き、そこに隠れたヒントを探すしかない。
歴史は我々に多くのパターンとケースを教えてくれる。
最後に、本当に経済がわかる政治家が少なくなったことが、非常に残念である。