やあやあ、なんてものを読んでるんだい?

と、いけすかなく誰かが仰った。
図書館の常連であった。


多少のお喋りが許される、若干静かな、かの図書館では度々読書感想というものが聞こえる。

単純に此処がこうで、この展開は素晴らしい発想で、複雑でありながらなんと明快! ああ、そう。その、本の、彼が、彼女が、これこれで素敵で。あれそれで胸を打たれて。まあまあ有意義な本であろうか。
と、感想を言い合うのもあるが。非常にこれは稀である。

どちらかと言えば

この作者のこれのこの表現は似つかわしくない。時に、この青年が取った行動に意味付けはされているのやら。しかして、此方の淑女が吐いた言葉、なんだこれは。非常に不出来。ナンセンス。こんなつまらないものだとは。ああ、呆れた。欠伸が出るよ。まったく、とんだ読書をしてしまった。
なんて、批評ならぬ、批判をしている声が多い。

話しかけてきた、奴(以降、カフスと呼ばせてもらおう。何故かって? 奴のカフスボタンのセンスが悪いからさ)はチラリとワタクシの読んでいた本を見て嬉しそうに笑った。

いやはや。なんてものを。

確か、そう。読んでいたのは「ミミズクと夜の王」だ。
此方は私の大変気に入りのもので、既に一冊持っているが、ついつい図書館でも手にとってしまう。
それで、カフスがそれを指差して。

そんな、童話の出来損ないのような。ただ、それらしき感動を詰めたものを読むなんて。まったく、いやはや。

これが最初の言葉だった筈である。
因みに以降は覚えていない。
とりあえず、カフスがこの本を嫌いなことはよく分かった。

やっと、呼吸をおいて批評の続きをしたそうなカフスを本を大事に閉じてからワタクシはしっかり鼻で笑いました。

キミは人に嫌われているくせに、本を嫌うんだねぇ。いったい全体、何と好きあってるんだい?

そう言って答えを聞かずに私は去った。
その日のワタクシの帽子は白かった。