顎関節症についてのお話です。

名前を聞かれたことのある方は多いと思います。


顎関節症というのは、それ自体が病名ではなくて、

症候名なんですね。


つまり、


顎の関節痛や咀嚼筋の痛み

口の開閉時に顎の関節雑音がある

口が開きにくいなどの開口障害、運動障害がある


こんな症状がみられた場合を顎関節症と呼んでい

ます。


その原因を特定することはほとんどの場合が難しい

ことが多いので、こういった症候名で統一されている

わけなんですよね。


まあ、いろいろな治療法が考えられているんですが、

何せ原因の特定が難しいため、試行錯誤しながらの

治療になることは致し方のないことだと思います。



わたしの20年あまりの経験から述べてみます。


原因の一番多いのが、やはりいい加減な歯科治療だ

と思います。

いい加減な虫歯治療が咬み合わせを狂わせて(咬み

合わせの合っていない詰め方、かぶせ方)、すぐに

症状が出る方は非常に稀で、ほとんどは数年後に症

状が現れるようです。

つまり、長年の無理が関節周囲組織、さらには身体

骨格にまで悪影響が生じているわけで、そう簡単には

症状を取り除くことは難しいことが多いです。


なので、私は、初めて当歯科医院を来院されるかたに

は、咬みあわせのチェックを必ず行って、異常所見が

見られた場合は、自覚症状のあるなしに関わらず、咬

み合わせを調整後、初めて虫歯の治療を行っています。


勿論、当歯科医院で治療歴のあるかたも、必ず定期的

にチェックをしています。細心の注意をはらって治療した

歯でも数年後には咬み合わせの微調整が必要のことも

多いです。これにはいろいろな原因がありますが、それ

くらい咬み合わせは難しいんですよね。

また、こうやって定期的にチェックすることこそが、顎関

節症の予防につながると思います。


幸い、こういった治療方針で20年続けてきて、いままで

誰一人として顎関節症を発症された患者さんはいません。



みなさんも、出来れば咬み合わせを定期的にちゃんとチェ

ックしていただける歯科医院を受診されることをお勧めい

たします。



さてここからは歯科医師向けです。


TMDの治療法で最近は咬合調整は選択肢に無いように

おっしゃる先生も多いようです。

これはAAOPのガイドラインを参考にした見解なのでしょう

が、TMDの治療に関してはいまだ確立されたEBMがない

と考えるのが妥当に思います。


TMDの治療は「可逆的で侵襲性の少ない方法を優先的に

行う」という考え方が主流なのですが、


咬合調整はそのどの位置に所属するのでしょう?


わたしの考えている咬合調整とは、患者さん固有の本来の

歯牙形態に戻すことを目的とした調整です。


患者さん本来の歯牙とは思えないような、補綴物、充填物

がとても多いのは事実なわけで、真っ先にこれを戻すこと

、またはそれを最初の治療目標の一つとすることが重要

とわたしは思います。


ちなみにわたしは、こういった咬合調整と今現在よくいわれ

ている運動療法は、20年前から治療方法として取り入れて

います。

咬合が明らかに原因と思われる症例にスプリントと運動療

法で対処される口腔外科の先生が多いのですが、症状の

緩和は得られても完治は決してありません。


そのような患者さんが当歯科医院でも多くて、咬合が原因

の場合はその治療をすれば、3~5年後にはほとんどが完

治しています。



スプリントはほとんどの先生が真っ先に考える方法だと思い

ますが、わたしはⅢ型(Ⅲ型bではマニピュレーション後)では

優先的に使用しますが、Ⅰ、Ⅱ型では第一選択肢ではありま

せん。

またスプリントはあくまで短期使用に限定することが非常に

重要で、カイロプラクティック処置を受けて見える患者さんに

は禁忌と考えています。




顎関節症はこうして治す

ー運動療法・スプリント療法入門ー


    永末書店


読みやすくて治療に役立つ一冊です。