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継ぐ者 源義経 〜鬼の弟〜 [源頼朝戦記 続編]

 

これもまた、顕如の企ての一つであったのか。

 

頼朝軍最強の部隊は、甲斐の雪に閉じ込められていた。

 

雪解けの迫るなか、古参の老臣たちが言葉を交わす。

 

故あって、この戦国の世に集うた者たち。

 

彼らの目に、いまの世はどう映っているのか。

そして――その決意とは。

 

 

挿絵1:ハイライト

 

源頼光「何か、分かったか」

 

雪も、溶け始めていた。

 

本格的に軍を動かすには早い。

それでも、伝令は届くようになっている。

 

太田道灌「二条城は落城寸前であったようですが……

梓様は、ご無事とのこと」

 

源頼光「それは何よりじゃ!」

 

 

挿絵2:ハイライト

 

源頼光「わしは、何もかも分からなくなったのじゃ。

だからこそじゃ、道灌殿」

 

頼光が、ゆっくりと歩み寄った。

 

源頼光「わしは、これまで信じてきたものを、これからも信じることとする。

頼朝殿の目指した世を目指し、突然、大業を継ぐこととなった義経殿をお支えする。

武家は……

民の敵では、ない」

 

挿絵3:ハイライト

 

結びに記された名を見て、苦笑ばかりしていた頼光の顔が、ふっとほころんだ。

 

源頼光「……実朝殿、ではないか」

 

道灌も、頷く。

 

太田道灌「義経様に代わり、このような書も含め、源氏をなんとか繋ぎ止めてくださっております。

頼朝様の志も、血も、絶えておりませぬ。

我らは、それをお守りする。

 

……なんとも贅沢な、武士の余生ではござらぬか」

 

 

挿絵4:ハイライト

 

冷えきった廊下に、一人の女が平伏している。

 

女は、顔を上げない。

そして、答えもしない。

 

本願寺悠であった。

 

頼光の妻としてではなく、城中の女中として働いている。

 

悠は、自らの舌を噛み切った。

それでも命は落とさず、言葉だけを失った。

 

道灌は、それ以上何も言わず、廊下へ出る。

 

その背後で、襖が静かに閉められた。

 

 

上杉弓が、部屋の外で待っていた。

閉じられた襖を、睨みつけている。