シナリオを書いている。

初めてシナリオを書いたのは高校2年の時。

放送部のコンクールに出品するラジオドラマだった。

“一般受けするように”を考えて重い雰囲気の会場で一瞬笑いを取った。

3年のときも同じようにラジオドラマを作った。

趣味に走ってとある舞台を完全にパクry……参考にして1本書いた。

70分くらいの舞台を7分にした時点でぶっちゃけパクリではないと思うんだけどな。


大学に入り、2年目にシナリオの授業なんてものがあった。

このころからだった。

自分のシナリオを「好き」と言ってくれる人がいた。

私は自信の有るものと無いものがはっきりしている。

シナリオは自信の無いものだった。

そんな状況で自分以外に自分のシナリオをおもしろいと言ってくれる人間がいるのは大きな励みになった。


同じ頃に戯曲を書いて舞台をやったのだが、いくつかあったアイディアの中、そのとき書いた戯曲のアイディアを選択したのは、やはりその人の一言があったからだった。






確実にその人が私の背中を押してくれていた。




大学を卒業し、シナリオで大学院に行くことが決まった3月~4月にかけて、あても無くシナリオを書いていた。

「その人が『おもしろい』と喜んでくれるように」

ひっそりと、しかし確実にその人は私の頭の中にいた。






だが、その人は今は私の隣には、いない。






今日、夏にかけて撮影され、秋にTV放送されるドラマのシナリオ1本がほぼ仕上がり、スタッフ用にコピーをしていた。

こまめにブログを読んでいる人には伝わっているかもしれないが、ここに至るまで何度も直され

自分のアイディアは削られ、結構機械的に書いていたりもした。

「これを自分の作品と言っていいのだろうか」

ということを考えたこともあった。いまいち愛着がもてなかった。


コピーが仕上がり、「これで自分の手を離れ、後は撮影現場で変わって行くんだ。これを元に映像が作られていくんだ」と思ったとき、急にこのシナリオが愛おしくなった。




これは自分の作品だ。




急にそう思えた。



もう1度、自分のために書いてみよう、そう思った。

その人は、もう私の書いたシナリオを読むことは無いだろうから。


もう1度、原点に帰っての出直しを。