「ほんま凄いわぁ、綺麗に治っとるやないの。」
「気のせい? なんか前より肌綺麗になってへん?」
「うふふ、せやろ? 奏音はんがなぁ、せっかくやし、言うて肌が綺麗になる水をくれたんよ。あとなんや薬みたいなんも飲まされてん。ずっと飲んどったら肌が綺麗になったんや。」
「えぇぇ、ズルこいわぁ、うちも薬欲しいぃ。」
「頼んだらええやないの。」
「言えへんよ、奏音はんに診て欲しいちゅうお客はんぎょうさんおるんやから。」
「もう、すっかり居候やなくてお医者様やんな?」
「あ、花里。奏音はんと出かけたんやなかったん?」
「出がけに慶喜はんが来はって、別な用事が出来たんやて。」
医者見習いの居候扱いやった奏音はんは秋斉はんと得意先を回って診てるうちに、すっかり評判の“将来は名医”と噂される人になって随分と忙しくなった。
異国語が話せるので慶喜はんの手伝いの仕事もあるらしく、秋斉はんに頼んで薬草を採取する仕事を覚えて奏音はんを手伝いたいと申し出た。
てっきり稽古があるからあかんと反対されるかと思うたのに秋斉はんは許してくれた。今日はそれに付いていく予定やった。
「ほうか。あんな、うち、花里に聞きたいことがあんねや。」
「なん?」
「聞きたいこと、ちゅうより、言いたいこと、かもしれへんのやけど。」
桃乃ちゃんは両頬を手でおさえて言いにくそうに俯く。
「あんな、うち、奏音はんに惚れてしもうた。」
「えええ!?」
周囲の新造の子らが驚く。うちも驚いた。
「奏音はんはええ子やけど……見た目がなぁ、わらしのようやろ。惚れるて、ないわぁ。」
「桃乃、そんな趣味やったっけ? 奏音はんは子ども過ぎるやろ、大人の男の色気がひとつもないで? 背は高いかもしらんけど華奢やし、声はちぃと高いし。19歳とはとても思えへん。」
「それになぁ、」
「うん、言いにくいけどなぁ、」
「なんよ? はっきり言うてや、釣り合わへん言うんやろ、どうせ、」
「阿呆、そんな意味やないわ。」
「嘘や、奏音はんみたいな将来有望のお医者様とうちでは、」
「違うて、桃、ちゃんと聞きい!」
「惚れた旦那はんと、いつか添い遂げる。遊女の幸せや、他の誰が釣り合わへん言うたかて、わてらが言うわけないやろ、応援するて。」
涙目になる桃乃ちゃんを叱咤激励する。けれど新造仲間の露葉ちゃんは残酷に追い撃ちをかけた。
「けど、奏音はんは無理や。他の子らも遊女姐さんがたもみんな言うとる。あの子はおなごの身体に興味無い。男色や。」
「ううっ、」
「桃も気付いとったんやろ? 百戦錬磨の姐さんがたが遊びで誘惑してもひとつも顔色変えへんのやで?」
「桃乃ちゃん、うちに聞きたいことってそれやった?」
コクンと頷く桃乃ちゃんに心が痛む。堪忍、桃乃ちゃん。うちも奏音はんはそっちや思とった。ついでにこれだけの綺麗どころとずっと暮らしとって、ひとつもそういう噂が登らへん秋斉はんもそっちや思っててん。二人がくっついたらおもろいなぁなんて他の子らと噂してたんや。

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