希望 | ロガリズム

ロガリズム

読んだ本の感想と、戯言です。戯れてあげてください。

意義を説明し、思考の経過を話し、予測を立ててもらう。慶喜さん、藍屋さん、吉田さん、伊藤博文さんと主に政策について話す。

大日本帝国憲法は伊藤博文さんが作ったものだが、その憲法のメリット、デメリット、戦争は何故起きたのかを話して、アイディアをだしあい、法案の枠組みを作っていく。

俺も翔太もまだ消えてはいない。体の一部分は相変わらず消えかけているけれど。

つまり、まだまだ戦争突入を避けるには不備が多すぎるということだ。

何かをきっかけに変わるのかもしれない。それがいつになるかは解らないが、俺は毎日懸命に法案を作っていた。

翔太には高杉さん、久坂さんと、龍馬さんに英語を教えてもらっている。伊藤博文さんが身分が低かったのに初代総理大臣になれたのは、その英語力を買われたかららしい。

「しかし、未来とはすげぇもんだな。」

土方さんがつぶやく。土方さんには俺の携帯アプリで兵法を勉強してもらってる。俺は戦術はさっぱりだからだ、シミュレーションゲームならやってたけど。

「こんな小さな箱にどれだけの本が入ってるんだ?」

「さあ? アプリ落とし放題で落としまくっただけなんで。俺もこんなの入ってるなんて知らなかったです。データ見ると1000ちょっと入ってるみたいですね。」

「短歌の本なども入ってるのか?」

「え? まさか他人の作品パクろうとしてます?」

「ぱくろ……?」

「いや、何でもないです。」

「ふむ、読み終えた。」

「早いなぁ、俺、そのページ、何が書いてあるかさっぱり理解出来ませんでした。」

「清の兵法はよく読んでいたからな。」

「武士のたしなみってやつですか。」

「しかし、こんなに軍事関係のものばかり俺に読ませてどうするんだ?」

「日本軍総帥にしようとしてるからですけど。」

土方さんが座っていた椅子からガタタッと転げ落ちそうになった。

「なっ!? 何を、そんな大役、殿を差し置いて俺が出来るか!」

「会津公には大臣になってもらうんで、軍は土方さんに統括してほしいんです。」

目を白黒させてあわてふためく土方さんの頭を撫でる。

「なにしてやがる。」

「いや、おどおどする土方さんが珍しくて。可愛いなぁと思って。」

「やめろ、阿呆。」

文句を言いながらもクスクスと笑う俺の頬を土方さんも撫でてくれた。束の間幸せな気分になったが切なさが襲ってくる。

どうしよう、俺、この人が大好きだ。

こんな時に強く思う。離れたくない。ずっと一緒に居たい。

「しかし、俺より高杉殿のほうが適任ではないか? かなり優秀な軍師だし、学問にも秀でている。」

「高杉さんは世界を見て歩くのが夢なんですよ、だから外務大臣になってもらおうかと。今、一生懸命英語を勉強してます。」

「そうか。」

「俺が目指す軍ってどんなだと思います?」

「解らん。お前はいつも、こちらの予測なんてまるで追い付かない発想をするからな。」

「地球上で初の"防衛軍"を作ろうと思ってるんです。」

「防衛軍……」

「他の国には派遣しません、侵略もしません、本土決戦もしません。」

「何をするんだ?」

「日本の海と空を守ります。他の国を絶対に攻めない、戦争には絶対に加担しない。ただ、日本への侵入者だけは徹底的に叩きのめします。」

「なるほど、それで戦争を回避するんだな?」

「できると思います?」

「さあな。解らん。解らんが。」

ふっと笑って、土方さんは自信たっぷりに言い切った。

「お前の望みなら俺が叶えてやる。」

その時だった。俺の体が淡く光り始めたのは。

「おい!?」

「あ……」

とうとう、来てしまった、この瞬間が。そして俺は理解する。

土方さんが約束してくれたから。

未来は変わったんだ。戦争の一番大きな要因は陸軍の暴走にある。それが変わったんだ。初代防衛大臣のこの人の決意で。

「奏音!」

土方さんが立ち上がって俺を抱き締めようとした。なのにその腕は空を切る。

体全体が、もう、透けていた。

「奏音!」

土方さんが泣き出しそうな顔で俺の名前を呼ぶ。

「はは、やっと名前呼んでくれましたね。」

「阿呆、名前なんて、いつでも、何度でも呼んでやる。」

「今のいままで呼ばなかったくせに。」

「頼む、消えるな。」

ボタボタと涙が落ちる。けど、頬を伝うはずの水の熱を感じない。感覚が薄れていく、景色も、土方さんの表情すら、かすんでいてよく見えなくなっている。

「その願いは、聞けそうにないです、けど、俺、土方さんが望むことを叶えたつもりです、近藤さんは生きている。沖田さんも病気になりませんでした。会津公は政治の中心に参加できるし。新撰組を立派な組織にするのが夢でしたよね? 防衛軍ですよ、すごくないですか?」

「お前と引き換えに叶う願いなど、どんなに望んだことでも嬉しいわけあるか!」

「すごい殺し文句ですね。」

ふざけろ、俺。笑え。

土方さんの最後の俺の記憶を、泣き顔になんかするな。

「めちゃくちゃ楽しかったです、毎日毎日、すげー充実してました。土方さん、大好きだ。会えて良かった。」

感触はないが、口付ける。そして俺はゆっくりと大気に溶けた、ようだ。もう何も判らない。

たとえ会えなくなっても、別れがあっても、出会えないよりは、ずっといい。

そう思わせてくれた貴方に、心から言うよ、愛してる。