垣根 涼介 平成23年9月30日「中央公論社」
新聞連載「めだかの学校」を改題、改稿
元日本経団連の会長、鷲尾が主催する就職斡旋セミナーを通して、自身の人生を見直し、再生していく群像小説。
定年退職した人懐こいおっさん竹崎
対人恐怖症で肥満体の29歳処女のフリーライター森川
引きこもりで休学中の東大生浅川
ヤクザから足を洗った無職の38歳柏木
この4人の視点が切り替わりながら、小笠原諸島での10日間が綴られていく。
第一部では読みながら講義を受けているような展開だ。
付き合っているウサギカップルが居て、2兎の住まいが洪水で流されて大きな川を挟んで離ればなれになってしまった。
男ウサギは筏を作りだし1ヶ月後には川を渡って会いに行く、と言いながら3ヶ月経っても筏は完成しない。
女ウサギは川の中のワニに背中に乗せて運んでくれないかと交渉する。
ワニは尻尾を食べさせてくれたら運んでやる、丸ごと食べたいけど我慢してあげようと答える。
女ウサギは悩んだ末に応じる。尻尾を食べられた痛みと恐怖で失神してしまったがワニは約束通り対岸まで運んでくれた。
ウサギカップルは再会を喜び男ウサギは
「これからは必ず君を幸せにするよ」
と約束してくれた。
ここで質問が入る。
百人の会社社長にもっとも多く選ばれた、取引したい動物としたくない動物は?
セミナー運営側の用意した解答は
取引したい動物がワニ
したくない動物は男ウサギ
私も読みながらそれを選んだ。
けれど後になって出てくる合否判定のシーンで元ヤクザ柏木の解答合わせが出てくる。
柏木は最初にワニに丸をつけて消し、取引したい動物に女ウサギを選ぶのだ。
理由はワニ「エグい取引」女ウサギ「滅私奉公型、ベター」
なるほど、ベストではないし、多少トラブルはあってもエグいより長く付き合っていけるという考え方で、セミナー運営側もそれを正解とするのだ。
読んでいて自己啓発本みたいだ。と思った。
だが、垣根さんの書くキャラは相変わらず愛嬌があっていい。
特におっさんが最高だ。エロくて馬鹿でしょうもなくて粗野で、だけどカワイイ。憎めない。
私は案の定、柏木にやられた。いい男だ、萌える。
人生観を考えさせられながらゲラゲラ笑えるシーンもあり読後感爽やかである。
特に喧騒に疲れてる人にオススメ。
力が抜けて前向きな気分になれます。