「ああ。今日ってエイプリルフールだもんね。」
やれやれ、驚かせやがって。と笑って続けるその人を泣きそうになりながら見つめて。
くるりと踵を返して走り出した。
"嘘"にされてしまった。
自分の本当の気持ちなのに"嘘"にされてしまった。
嘘ではないと言えば良かっただろうか?
それは本当だろうか?
真剣な表情で伝えたつもりなのに、嘘だと言われたという事は。
"嘘"にしたいって事なんじゃないかな?
つまり、迷惑。
本当だったら本当に迷惑。
だから、嘘にした。そんな嘘に騙されないよという笑顔で、拒否の気持ちを嘘で隠して、それは嘘でしょ? と嘘をついた。
「女々しい……。」
つぶやく。いつもこうだ。なんで僕はこう男らしくないのか。
あの人はそんな嘘をつく人では無い。
きっと迷惑なんて思ってなくて単純に僕がそういう気持ちを自分に抱いてるはずなど無い。と考えているのだ。
「ね。なんでいつも帽子かぶってるの?」
最初にかけられた言葉に僕は涙ぐみそうになった。
なんて意地悪な人なんだろう、僕をバカにしてからかってるんだろうか。
僕が帽子を被る理由なんて見ればすぐに判るじゃないか。こんな癖のヒドイ天然パーマ見たことあるかい?
その人は僕が喉から手を出して欲しがるほどのサラサラなストレートヘアだった。
「もったいないなあ」
「へ?」
意表をつかれて変な裏声が出た。
うつむいた僕の顔を覗き込むように僕の身体の下に身を屈めて入ってくる。
「スゴく綺麗な瞳してる。ロシアンブルーの猫みたい。」
猫っ毛じゃなくて羊だよな。と友人にからかわれたことなら何度もあった。
ロシアンブルー? あの猫だって綺麗な直毛じゃないか。
「外国の血が少し入ってるのかな? 鼻筋も高いね、いいなぁ。」
僕はあなたのくりくりとした目と小さな鼻と真っ直ぐな髪のほうがうらやましいのだけれど。
意地悪だとはもう思わなかった。それから何度会っても、ついに帽子を取って欲しいとは言わなかったからだ。
他の人には良く「室内なんだから脱げば?」とニヤニヤしながら言われていたのに。
だから、あの人は"嘘"であって欲しいから、なんて対応はしないんだ。
僕が逃げているだけ。
本当なんです、と伝えなきゃ。