「かんぴょう巻きって、この世から無くても良くね?」
「え~?」
俺のつぶやきに彼女は目をパチパチさせて左上の虚空を見上げた。
何を話そうか間を置く時の癖だ。
「メンマの時もそんな話したじゃん。割り箸混じってたら区別つかなくね? とか言ってさ。」
「そう思わん? 何の為に必要よ?」
「おでんの竹の子巻いたり、ロールキャベツ作る時便利じゃん、かんぴょう」
「縛る用途は良いとして、かんぴょう巻きの意義は?」
「食感?」
「あのへにゃへにゃ求めるやつ居るか~?」
「ナタデココ好きなくせに食感に文句言う資格なくね?」
「あのコリコリは神、かんぴょうとは比べ物にならん。」
回転寿司屋に寄った帰り路にそんな会話をしていたからだろうか、この仕打ちは。
嫌がらせ? ってのはないか、彼女の性格的に。おそらくボケである。
愛犬の首にリボン形状のかんぴょうが巻いてある。毛並みに合わせてレイヤーカットまで施しやがって。トリマーか!
ペットショップに行った時も漫才のような掛け合いをして店員に笑われたものだ。
最終的には俺の希望のヨークシャーテリアを購入したのだが、彼女は柴犬とか秋田犬とか毛の短い犬が好きで、「大きくなったら室内で飼えないでしょ。」と言うと「豆柴犬なら問題ない。」と反論。
ちょっとグラつきかけた、なんだあの豆っころの可愛さ。
「じゃあ私が名前つけていいならヨーキーでいいよ。」
と妥協して付けられた名前が"紅丸"だ。彼女の出身地ではイトーヨーカドーは全てヨークベニマルになっているかららしい。
外見に似合わない名前にも程があるよ、ふざけてる。
それでも、このボケをどう弄ろうか、ツッコむか、ボケ返すのか考えてる俺も結局似た者同士なわけで。
待て待て、今日はそんな場合じゃない。大事な局面なんだ。
「あのさ、俺と結婚しようよ。」
「人生の山場キタコレ!」
「茶化すなっての」
「だって、シリアスモード3分持たないんだもん。」
「お前、そんなんで結婚式どうすんの?」
「え~? そんなそれこそ人生の山場じゃん、ウケ狙いに行くでしょ。」
「マジで?」
「笑ってはいけない結婚式やろうよ。新郎、アウト~。」
「俺かよ!」
「結婚したくなくなった?」
イタズラっぽく笑う彼女をギュッと抱き締める。
ワンワワワン!
愛犬がなんでやねん! と吠えた気がするけど気にしない事にした。