澤田君に誘われてK高校の文化祭に来ていた。
K女子高の制服を着た女の子がたくさん居た。やっぱり姉妹校だから演劇部だけじゃなく他の部活や生徒会も交流があるんだと思う。
「樋浦はどっちと回ってるんだろうね。」
「どっちって?」
「高崎と楠原。2人とも樋浦を誘うって言ってたからさ。」
「楠原君と回った後に高崎君のライヴを観に行くって言ってたよ。」
「そっか。樋浦らしいな。」
「ハル君らしい?」
「どっちかを選ぶって発想自体が無い。」
そうなのかもしれない。ハル君はよくザキちゃんやモトちゃんに言われていた。
『好き』に種類を付けなさすぎだって。
監禁された後はよく説教をされていた。
「"嫌いじゃない"ってだけで相手の欲求を聞きすぎる癖直した方がいいよ?」
とモトちゃんが話す。
「髪の毛触らせて」
「腕触らせて」
「お姫様抱っこして」
突然そんな欲求をしてくる女の子達に全部
「いいよ?」
って応えるのだ。
触られて平気なのかな? と心配だった。
けど、ずっとハル君を見ていたら気付いた。
「それはちょっと無理。」
と断った時に、「え~?」と女の子が不満そうな顔をした時に、ハル君は一瞬だけピクリと身体を強張らせる。
触られるのが恐いんじゃなくて。
もしかすると女の子の不機嫌な表情が恐いのかな。
「何を恐がるかは人それぞれ違う、それでも恐怖に逆らえないのは同じだ。」
そんな事をハル君が言っていたのを思い出す。
不機嫌な表情を見たくなくて何でも欲求を飲んじゃう、とか?
いろいろ考えてもハル君の事はよく解らない。半年近く毎日に近い頻度で一緒に居ても。
ハル君は怒らないし、不機嫌にならないし、いつも態度が一定で、誰にでも優しい。そしていつも笑っている。
最初は安心していたその態度も。もしかしたら無理してるんじゃないかなと思ってしまうと不安になる。
ハル君って誰かに甘えたり泣いたりするんだろうか?
「あ、樋浦と楠原だ。」
澤田君の示す方を見る。
「隣に居る男誰だろ? デカイな。」
体格の良い、ちょっと怖そうな男の子。夏の演劇フェスで一緒に居た男の子に雰囲気が似ている。
ハル君は無邪気に笑っていた。あんな表情、学校では見た事が無い。
チクリと胸が痛む。
ハル君の私の前での態度は。
女子校内での、他の女の子の前での態度と全く変わらない事に気付いちゃったから。