第6感-Ⅱ | ロガリズム

ロガリズム

読んだ本の感想と、戯言です。戯れてあげてください。


「あなたは我が家で言う【斥力】を持っていますね。」

楠原君も言っていた。霊が寄ってこない特質があるらしい。

「あなたは小さい頃から訓練できていたんですよ。諦念、拒絶、乖離。自分の欲望を遠ざける、他人に期待しない、甘えない、自分の事さえ拒絶してきた。

その繰り返しで、結果的に知らないうちに【斥力】の訓練が出来ていた。そのあなたが切り離したくて切り離せなかった欲望。やっと失えたのに、今更取り戻す事など、ただでさえ自己欲求が弱いあなたには出来ません。

こと、何かを【欲しがる】ことほど、あなたにとって苦手なものはない。」

確かに欲しがるのは苦手だ。
けど、楠原君の為なら。

「出来ませんよ。どんなに息子を助けたいと願っても。息子の意思の方が強い。

息子には、あなたには戻さないという決意と、あなたを守りたいという欲求がある。

あなたの願望は、【失いたい】と【息子に守られたい】だった。

才能じゃないんです。意思の強さなんです。

そして何より。

人間は自分の願望には勝てません。

息子なら大丈夫です。私も協力しますし、すぐに通常に戻しますよ。しかし、寺に戻ってもう少し安定する処置が必要です。息子を連れ帰りますね。」

楠原君のお父さんが楠原君をかかえて車に去っていく。

私は、どうすることも出来ずに、ただ、車を見送った。

消してほしいと願ったのは私。

楠原君に頼ったのも私。

甘えすぎたのも私。

けど、思い出す。

あの化物が私に何を言っていたかを。

どんな風に苦しめられたかを。

楠原君は私の過去を視たのかもしれないが、全てを視たわけじゃないだろう。

あの化物が見せる映像を今、楠原君は見ている。

「ふざけんな……。」

自分と楠原君の両方に向かって言う。

「自分だって、自分だって! ずっと辛かったくせに! なんで他人の分まで引き受けてんだよ!」

願望には勝てない?

勝ってやる。

その願望は、女の子のアタシの願望だ。

勝ってやる。打ち崩す。

楠原君の意思にも、自分の甘えた願望にも逆らう。

言ったはずだ。【お前が辛い方が嫌だ】と。

忘れやがって、馬鹿野郎。

私は、走り出した。

考えろ。

どうやって、奪い戻すか。

作戦を立てる必要がある。