私は元々左利きで、それを本人も周りの大人も気づかずにいたから、箸を使って食事をするのが困難だった。
給食の時間に給食を食べ終われない。
だから、前の担任の時はベランダで食べさせられた。
嫌いなものを食べられない子も同様だった。
代わりに新しく来た先生は給食の時間は給食を食べなくて良いと言われて本を読んだ。
放課後に給食を食べる練習をした。その競争相手に選ばれたのがソウタ君だった。
私は当時、ほとんど口をきかない子どもで。まったく笑いもしないし泣きもしないので。
クラスメートは「地縛霊」と気味悪がって話しかけて来なかった。
唯一話しかけて来たのがソウタ君だったので選んだのだと思う。
それをきっかけにソウタ君と仲良くなって一緒に遊ぶようになった。
ヒサシ君はソウタ君の友達で、ソウタ君と遊ぶうちに話すようになったのだ。
その仲間内で流行っていた遊びが【男ならコレは出来るゲーム】
蛇を素手で掴むとか橋の上から川に落ちるとか。
仲間内で思いつく度胸試しをそれぞれクリアーする。
私はその度胸試しを、何の躊躇もなくソウタ君の次にやってみせた。
と言っても飛び降りてシュタンっと軽やかな音を立て着地するソウタ君とは違い、
ドベシャっと音を立て派手に転び捻挫したり前歯を折ったりしていたのだが。
一切泣かないので「お前男だな!」と勘違いから認められただけだ。
危険な遊びを「お前なら出来る」と言うのがソウタ君で、「バカ、無理すんな」と止めるのがヒサシ君だった。
私はどっちの言葉も嬉しかった。
「お前、いつも黙ってるとき、何考えてんの?」
とヒサシ君が聞いてきて。
「今日は医者の罪について考えてた。」
ヒサシ君に先進国で長寿の日本と、10歳に満たず亡くなっていく途上国の話をして。
裕福な人間が居るから飢餓で死んでいく人が居るんじゃないか。
80歳で死ぬ人と10歳で死ぬ人が居る世界より、昔のように大抵の人が50歳で死ぬ世界の方が良いんじゃないか。
医者の延命治療は、遠い国の知らない誰かを殺す事とイコールなんじゃないか。
そんな話をした。
同じような話を母にしたら「気持ち悪いから喋らないで」と言われて、誰にも話せなくなった【自分の考え】
「お前の話、面白ぇ」
とヒサシ君は言った。
その時の目の前が明るく拡がるような高揚を忘れられない。
【続く】