翁社長スピーチ④ | TEMnet.

翁社長スピーチ④

 自分自身の経験にもとづいて、さらに二つのことをお話しようと思います。

 私は大学に入ってから、横浜のあるバーで数年間働いていました。5時から12時まで毎日、それなりに生活もかかっているから頑張って働いていたんです。なので、お店のオーナーも「翁くんは真面目でいい奴だ」と、それなりに気に入ってくれていたんですね。


 そして、大学三年生のときに、父親の友人が東京のある展示会に参加するために来日したんです。それで、そのことをたまたまお店で話したら、お店のオーナーでありママさんみたいな人が家に帰って旦那さんにその話をされたんです。


 そうしたら、その旦那さんは事業をされていたんですが、非常に中国に興味があって「できたら、一度お会いしたい」という話が僕の方にきました。それで僕がアレンジして、父親の友人とその方を引き合わせたんです。それが、僕がビジネスの世界に入るきっかけになったんです。


 当時、僕は工学部の学生だったので、単純に将来はどこかの大手メーカーに、ソニーにでも入れたらラッキーかなと思っていました。そのころの夢は、ちゃんとした大企業にエンジニアとして就職できれば親も非常に喜んでくれるだろう、というぐらいの目標設定でした。


 それが、その出会いによって一緒に何回か中国に市場調査に行ったり、中国のいろいろなビジネスマンと会ったりしました。僕は、まだ学生だったので通訳をしたんですね。


 で、その後、いろいろなきっかけがどんどん重なっていって、今度は日本のいろいろな中小企業の社長さんを中国にお連れして、様々なお話に参加させていただく機会を得て、徐々にビジネスのおもしろさを感じるようになったんです。


 それで、最終的に、エンジニアではなくてビジネスマンになろうと思って、伊藤忠商事に入社しました。


 伊藤忠商事の入社試験を受けた当時は、いわゆる外国人を日本で正社員として採用する制度があまりなかったんです。五大商社と言われている会社のどこにもなくて、現地採用という形しかなかった。


 つまり、自分の国に戻って働くのであれば十分に機会があるけれど、日本で日本人の新卒学生とまったく同じ待遇で働けるということはできなくて、東京の本社であれば留学生を新卒で採用するということもあまりなかったんです。


 でも、幸いにして僕は就職できたのですが、今振り返ってみると、バーでバイトして、中国でビジネスの通訳をする経験ができて、そして五回くらいあった面接で会社の先輩社員たちがその経験を買ってくれたから、採用が決まったんだと思います。


 自分がいろいろやってきたこと、それが全部つながってきて、今の自分があるんです。もし、伊藤忠商事に入社していなかったら今の会社はないと思います。僕は「伊藤忠大学」と呼んでいるんですけど、そこで学んだ様々なビジネススキルが、今非常に役に立っています。


 だから、今、僕がここに立っているということは、横浜のバーのバイトや、中国に行って通訳をしていたこと、伊藤忠で毎日課長に怒られていた自分、それがあったからこそ、今の自分があるんです。