中国の雲谷禅師が袁了凡に教えたとされる「功過格」には、徳を格付けする基準が、善行50.悪行50に分けて記載されている。これは徳の高さを点数や金額に換算するという点で、広瀬淡窓より具体的である。すべてを掲げられないが、主だったものを見てみよう。

★まず善行50カ条の中身から。

100善に相当する行~一人の人間の生命を救い、死を免れさせたこと、ほか。

50善に相当する行~一人の者を出家得度させたこと、ほか。

10善に相当する行~一人の知恵に富む人を世に出してやったこと、ほか。

5善に相当する行~悪性の訴訟を諭して思いとどまらせたこと1回、ほか。

3善に相当する行~一つの不法の仕打ちに対して怒らなかったこと、ほか。

1善に相当する行~一人の善行を褒めたこと、ほか。

そして、10円が1善に相当する行として~道路、橋を開通し或いは修繕したこと、ほか。をあげている。

★次いで悪行50カ条の中身。

100悪に相当する行~一人の生命を失わせたこと、ほか。

50悪に相当する行~他家を断絶させたこと、ほか。

30悪に相当する行~一人の者の戒行を破らせたこと、ほか。

10悪に相当する行~一人の知恵のすぐれたものを排斥したこと、ほか。

5悪に相当する行~世の中の良風俗良習慣を一つ破壊したこと、ほか。

3悪に相当する行~長幼尊卑の秩序を破ったこと、ほか。

1悪に相当する行~一人の善行を無にしてしまったこと、ほか。

そして、金10円が1悪に相当する行として~天の生ずるものを無益に浪費しつくしたこと、など。を上げている。

注意すべきは、善行について「但し、金品等の謝礼を受けて為した行為はこれを除く」、また、悪行について「但し、誤って犯したものはすべて除く」としていることである。前者は、金銭を受けて行ったものは徳にならないことを、後者は、悪意がなかったものは許されることを示している。